ひとくち伝言 平成14年2月




 手元に、全国浄土宗青年会が編纂した「伝えることば」という伝道文例集があります。ぱらぱらとめくってみると、なかなか面白いのです。
 『意思が濁ると意地となり、口が濁ると愚痴となり、徳が濁ると毒となる』という傑作な箴言がありました。私も「多才が濁るとダサイになる」「小手が濁ると後手になる」などを考えましたが、これにはとても及びません。それはともかく、愚痴については、次のような素敵な言葉もありました。
 『愚痴だから 聞くだけ聞いてと 妻いとし』
 突然愚痴を言いだすのではなくて、ひとこと「これを言えば愚痴になるんだけど…」と、前置きをして話してもらうと、かなり楽に聴けるようになるものです。そして楽に聴ければその分だけ、何も意見を言わずにただ聴くことがしやすくなります。愚痴とは、自分ではどうにもならないことをかかえこんでいることを言います。ただ黙って聴くということは大変に難しいことですが、聴いてもらえた方は心の濁りも消えて行きます。『気がすむ』とはまさにこのことでしょうか。
 『人に話をするとき、その話している自分自身の声を聞いている』
 ひとに話すということは確かに、まず自分が聞いていることなのですね。だから、心に思うだけなのと、声に出して話すこととは、全然違います。それならば、ひとり余計に聞いている場合の方が、良い結果になるでしょう。
 『人の思いを聞き当てることも難しいが、自分の思いを言い当てることはもっと難しい』。正直言って、自分が本当は何を望んでいるのか、あるいは何を感じているのか、自分自身ではっきり分かったらどんなに楽だろうと思います。自分が本当はどうなのかを意識できていない時に、私たちの心というのは、どうにも動きがつかなくなっているものなのではないでしょうか。 『ないものを欲しがらんと、あるものを喜ばしてもらおうよ』
 これもまた、私たちはなかなかできないことです。あるものは目に入らないで、無いものばかりが視界に入ってきます。なぜなら、すでにあるものは自分の中にしまわれているから見えなくて、無いものは自分の外にあるからとても目につきやすいという道理なんですね、きっと。
 耳に残っている祖母の言葉に、『大きすぎて目に入らない』ということばがあります。祖母は、大きな幸せというのはかえって見えないのであって、あなたには小さな不幸せばかりが見えているのではありませんか、と言っていたんだということに、今頃になって思い当たったのでありました。
百観音明治寺 住職 草野榮應







   ひとくち伝言板   

明治寺;〒165-0025 東京都中野区沼袋2-28-20



平成14年(2002年・仏紀2567年)2月の行事ご案内

2月 3日(土) 午後2時より
  百観音節分祭・星祭・追儺(豆撒き)

2月 6日(水) 午後1時半より  法話の会

2月10日(日) 午前9時より  写経の会

2月17日(日) 午後1時より 月例百観音法要(観音経読誦と法話)

2月13,27日(水) 午後6時半より とにかくすわってみる、坐禅の会




 節分も間近に迫り、着々と?準備が進んでいます。今年はその日が日曜日になるので、相当賑やかな節分になりそうです。
 撒き物のご奉納を、当日の間際まで、ありがたくお受けしております。
 豆撒きのとき、夢中で叫ぶ子供たちの歓声に包まれると、つい目一杯の元気を出して、駄菓子やチョコを投げてしまいます。すっかり撒き終えて、空っぽの枡を持った時のさばさばしたうれしさは、何とも言えません。その爽やかさの中に、かすかな春がきざしているようです。
       節分や 鬼も駄菓子を 拾いけり

 切手郵送代感謝録
八木澤様、後藤様、藤田様、大橋様、穂苅様、長島様、中村(博)様、匿名様光野様、佐野様、里吉様、青柳様、大森様、杉浦様、魚田様、匿名様、

 何人もの方から「ひとくち伝言」にご支援やご声援を頂戴し、住職冥利に尽きる思いで、感謝いたしております。これまでよく続いたものだと思いますが、やはり「楽しみにしてます」の一言が大きな支えになっています。毎月大量の紙を使って駄文を刷り、貴重な資源を無駄にしているのは間違いないのですが、次のようなお便りを頂くと、まったくの無駄とも限らないかも知れないと、ほっとします。

高貴さんからのお便り…「私共が百観音明治仏教大学に入れていただきまして、三年の歳月がながれ、十一月から自称四年生になりました。毎月の通信を読ませていただきながら、私なりに考え、ハガキ一枚の研究レポートを書いてきました。ご縁に触れたのを機会に、般若心経や観音経の解説書を読み、又増谷文雄先生の仏教概論や阿含経に出会って、ブッダゴータマ様を源とする仏教というものの大きな流れのあることを知りました。今までまったく知らなかった世界を垣間見ることが出来まして、ご縁にふれお導きを頂きましたことを感謝申し上げております…」
 高貴さん、本当に毎月必ずレポートをいただき、ありがとうございます。




東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應