ひとくち伝言 平成16年1月

真観清浄観 広大智慧観
平成十六  甲申  年
西暦二〇〇四年 仏暦二五六九年  元 旦

 一年の月日の流れを、年々早く感じるのは真に不思議なことでございます。子供の頃は「もういくつ寝ると...」の歌の如く、お正月が来るのを首を長くして待っていたものでした。ところが今は、もう年の瀬?、もうこんな時期なの?と驚くばかりなのでございます。確か、去年の門松を今年までそのままにしておいたヨ!という落語があったと思いますが、本当に矢のような時間の速さを実感させられます。
 ある人が、分数の分母が年を重ねるに併せて増える、と言っていました。生まれたばかりの赤ちゃんは一年が一分の一で、十歳になると十分の一、二十歳は二十分の一に感じられるのだそうです。すると、百歳では一年が赤ちゃんの実に百分の一でしかないことになります。でも、決してオーバーなのではなく、また時計は相も変わらず一秒一秒を刻んでいるのですけれども、意識の中で一年の巡りが明らかにスピードが増しつつあることを認識している次第です。新しい歳を迎え、皆々様の益々のご健康とご多幸、そして悠久の時の流れの中で、日々ご精進をお積みくださることをお祈り申し上げます。
 昨年のこのご挨拶に、まだまだお元気であった榮應和上が次のように書いておられました。「(平成十四年は)入院などと色々なことがございましたが、却って『お護り』をいただいたと感じることが多々ありまして、日本語には『ありがとう』と『おかげさま』という美しい言葉のあったことを、まことに仕合せであったと、しみじみ思う年でありました。今の私は、希有にして得難い恩恵の中に生かしていただいております」と。そして、文章は「今年も、美しい日本語の中から、やさしい言葉をたくさん見いだせるような一年でありたいと願っております」で結ばれていたのでした。目の前にチラチラする小さな事々に囚われず、遥か彼方に目を凝らし見つめておられたに違いありません。たとえ一年がだんだん短く感じられようとも、宇宙と自然と社会と周りの多くの方々のお蔭をいただいていることを忘れることなく、一日一日を精一杯生きましょう――こんなメッセージが聞こえてくるような気がいたします。私たちは既に星になられた和上の願いを、しっかりと受けとめて今年も有り難い毎日を大切に過ごしたいと思います。
 さて、表題の《真観清浄観、広大智慧観》について簡単にご説明することにいたします。観音経(かんのんぎょう)の偈文(げもん)、繰り返しながら詩文の形式で説かれている部分の後半にある一節です。これは観音さまがこの世をご覧になるお力を表す五観=真観・清浄観・広大智慧観・悲観・慈観=の内の三つで、真観はものを正しく見ること、清浄観は真観を拠り所として何事にも執着せぬこと、広大智慧観は真観と清浄観をさらに深めて、万物が寄り添いつつ調和している世界を眺める自分を観ずる(見つめる)ことでありましょう。観音は、正確には観世音菩薩とお呼びすべき御名を親しみをこめながら縮めてお呼びすることになる訳ですが、世の中の音(声)を観じて(みて)くださる菩薩さまなのです。その観世音菩薩様は今なおご修行を続けておられて、私たちに身を以て教え諭してくださる姿を示しておられます。悲観は他の苦しみを我がものとする(苦を除く願いを抱く)、慈観は喜び(楽)を万人に施すことで、広大智慧観がここまで及んでいると考えることができます。榮應和上はこの五観をも説いておられましたが、詳しくはまた別なところでご紹介することにいたします。
 観は心(の目)でみる意味に解釈いたします。どうぞ広く大きな心で世の中を見渡して、毎日を大切にお過ごしくださいますようお願いいたします。

平成十五年七月十二日に榮應和上が遷化なされて後、和上の実兄・知明が当面の住職を つとめております。今後も変わらぬご芳情を賜りますようお願い申し上げます。

〒165-0025 東京都中野区沼袋二丁目二八番二〇号

  百 観 音 明 治 寺

平成16年の行事ご案内
(毎月十七日の法要はすべて午後一時からです)

◆ 一月一日(木) 修 正 会(しゅしょうえ)
◆ 一月十七日(土) 月例法要 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌
◆ 二月三日(火) 節分祭 星祭 午後二時より豆撒き
◆ 二月十七日(火) 月例法要
◆ 三月十七日(水) 月例法要 春彼岸 大施餓鬼会
◆ 四月八日(木) 釈迦降誕会=花まつり 花まつりコンサート(予定)
◆ 四月十七日(土) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌
◆ 四月二十九日(祝日) 慈音会法要・多宝塔供養祭
◆ 五月十七日(月) 月例法要
◆ 六月十七日(木) 月例法要
◆ 七月十七日(土) 月例法要 盂蘭盆 大施餓鬼会
◆ 七月二十五日(日) 百観音献灯会(予定) 夕方六時より
◆ 八月十七日(火) 月例法要
◆ 九月十七日(金) 月例法要 秋彼岸 大施餓鬼会
◆ 十月十七日(日) 月例法要
◆ 十一月十七日(水) 月例法要 大祭・大護摩供 ならびに境内石仏総供養
◆ 十二月十七日(金) 月例法要(納めの百観音法要)

※ 毎月第一日曜日午前九時より 写経の会(小筆を一本ご持参ください)
(但し 一月は四日、二月は八日(第二日曜日)に変更いたします )

坐禅の会・法話の会は現在休止させていただいております。再開の見込みとなり次第お知らせいたします。