ひとくち伝言 平成18年1月

無垢清浄光 慧日破諸闇
               平  成  十  八  丙 戌  年
     西暦二〇〇六年 仏暦二五七一年 元 旦

 平成十七年もまた防災、殊に自然災害の備えについて考えさせられる年でありました。八月にアメリカ南部を襲った巨大ハリケーン「カトリーナ」による死者・行方不明者は七千人を超え、ニューオリンズの一部は依然水没したままといいます。崩壊した家屋や堤防の修復は進まず、被災地救済のための国家費用も膨大な額に達しています。尤もハリケーンに限らず、台風もサイクロンも年々大型化する傾向にあるようで、地球の温暖化がその原因ともされています。

一方、地震に対しても備えが大切であることは同様ですが、建物の耐震強度を偽るなどは言語道断、むしろ建設コストを厚くしてでも安全優先を心がけてほしいものです。ともかく、個人はもちろん地域・自治体、延いては国全体が更に防災意識を高めなければなりません。平成十八年が明るく安心の一年となることを願い、併せて皆様の日々益々のご健勝とご精励をお念じ申し上げます。

 さて、全二十八品(章)から成る『法華経』の第二十五章が皆様ご存知の「観世音菩薩普門品」、いわゆる「観音経」です。これは、普門(あまねく開かれた門)から観音経を唱えるすべての人のために説かれた教えであり、あらゆる方向に眼を向けて人々を救う観世音菩薩の功徳が書かれています。当山では開基榮照法尼を始め、歴代先師(密信和上・榮龍和上・榮應和上)、昌悦法尼、あるいは開山以来の多くのご信者様方が観音経の温かさに触れ、不思議な力に癒され、豊かな法悦に浴して来られました。ここに言う救う、救済するとは、不安や怖れから解き放たれ、心が穏やかさで満たされること、またそれを体得(実感)することを指しています。しかし、観音様が直接私たちの身に触れて辛いことや痛さを取り除いてくださるというよりも、いろいろな苦痛に耐え得る強さを抱かせてくださるのですから、そのパワーがどれほど大きいかを計り知ることができると思います。どうぞ「念彼観音力」と繰り返し唱え、ご自身の内に昏々と強さの湧き出づることを念じていただきたいと存じます。

 観音経の偈文(本文の長行に対する五文字ずつの詩文=応頌=の部分)に、「無垢清浄光 慧日破諸闇 能伏災風火 普明照世間」の一節があります。これを、ある解説文を引用すれば「観世音菩薩の放つ汚れなき清らかな光は、智慧の輝きで無知の闇を消し去り、よく災いの風や火を鎮め、世の中を明らかに照らし出す」と意訳することができます。肝心なのは、この『闇』は、例えば社会の暗部をそのように呼ぶのではなく、私たちの悩み、あるいは精神的な弱さなどを指摘している点です。『風火』は心の乱れ、欲望、葛藤、怨憎、対立などと解釈することができます。従って、ひとりひとりが観音様のお蔭をいただいて『闇』を『破る』ことができれば、世の中すなわち一人一人の心に光明が射し込んで幸せに過ごすことができる、という意味になるのではないでしょうか。大きく考えるときに、全世界のすべての人々が国境や人種や宗教の壁を超えて心の平穏を保ち、和を尊び互いに協力の輪を結べば、たちまち戦争は消え失せ、地球温暖化や緑地保全(砂漠化対策)、そのほかの諸問題も解決するに違いないと思われます。あるいは災害に対しても、国や地域同士の連携によって被害や負担を軽くすることができるのですから。

 昨年のこのご挨拶でも申し上げたとおり、万人の苦を除く願いを抱き遍く楽を施すための大きな希みを持っておられる尊いお方「観音様」を心の支えとし、これからも変わらぬ信仰の道を歩み続けたいと思います。観は心(の目)でみる意味に解釈いたします。どうぞ広く大きな心で世の中を見渡して、毎日を大切にお過ごしくださいますようお願いいたします。                        知明拝


平成十八年 行事ご案内   毎月十七日の法要はすべて午後一時からです

1月1日(日) 修 正 会(元日護摩供・ご祈祷)

1月17日(火) 月例法要 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌

2月3日(金) 節分祭 星祭 午後二時より豆撒き

2月17日(金) 月例法要

3月17日(金) 月例法要 春彼岸 大施餓鬼会

4月8日(土) 釈迦降誕会=花まつり 花まつりコンサート

4月17日(月) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌

4月29日(土・みどりの日) 慈音会法要・多宝塔供養祭

5月17日(水) 月例法要

6月17日(土) 月例法要

7月17日(月) 月例法要 盂蘭盆 大施餓鬼会

7月30日(日) 百観音献灯会(予定) 夕方六時より

8月17日(木) 月例法要

8月17日(日) 月例法要 秋彼岸 大施餓鬼会

10月17日(火) 月例法要

11月17日(金) 月例法要 大祭・大護摩供 ならびに境内石仏総供養

12月17日(日) 月例法要(納めの百観音法要)
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毎月第一日曜日 午前九時より  写経の会(小筆を一本ご持参ください)
      但し 一月は八日(第二日曜日)に変更いたします