ひとくち伝言 平成19年1月

平  成  十  九  丁 亥  年
                         西暦二〇〇七年 仏暦二五七二年 元 旦

 十二月十二日は日本漢字能力検定協会が定める「漢字の日」だそうですが、同協会は公募の中から毎年この日に一年の世相をあらわす一字を選び発表しています。平成十八年の『今年の漢字』は《命》でした。秋篠宮ご夫妻に悠仁(ひさひと)親王がお生まれになったことは明るい話題でしたが、確かにいじめや飲酒運転による事故等のニュースも多く、命の重さを痛感した年でもありました。命を大切にし、健全な心を培い、なごやかな日々を過ごしたいと思います。平成十九年が安心の一年となることを願い、併せて皆様の益々のご健勝とご精励をお念じ申し上げます。

 表題の「甘露法雨」「滅除煩悩」は観音経の偈文の一節で、観音さまは甘露の法雨を?いで煩悩の炎を滅し除いてくださる  という意味です。その甘露の如き優しく味わい深いお心に浴する時、私たちの燃え盛る迷いや苦悩は自然に消えるものと解釈することができるでしょう。それは、昨年のこのご挨拶文の中で申し上げた通り、観音経の不思議な力に癒され不安や怖れから解き放たれ、心が穏やかさで満たされること、またそれを体得(実感)することを指しています。観音さまが私たちにいろいろな苦痛に耐え得る強さを抱かせてくださるのですから、そのお力を戴くためにも「念彼観音力」と繰り返し唱え、ご自身の内に昏々と強さの湧き出づることを念じていただきたいと存じます。

 平成十八年はまた、歌手であり作詞(作詩)家・作曲家でもあるさだまさしさんの温かい大きな心に明治寺が包まれた一年でした。五月に書き上った詩には、先代榮應和上が産み育てた恒例行事献灯会の情景に和上の面影を重ね「百観音の献灯会 あなたを想って灯します 南無観世音あの人を お守りくださりますように」とあり、間もなく曲を付けて九月に発売されたさださんのCDアルバム《美しき日本の面影》の中に収めてくださったのです。その曲のタイトルは行事名の『献灯会』ですが、境内の花や生命のこと、また、無数の灯を「庭に舞い降りた天の川」と表現するなど、しみじみとした素晴らしい曲に仕上げてくださいました。献灯会に参加する千人もの方々のそれぞれの想いが、ありありと心に浮かぶ歌でもあろうと思います。

 さださんは平成十八〜十九年の六十回余りのコンサートツアーの全てのステージで、会場のファンに向かって榮應和上のこと、明治寺のこと、この行事のこと等々を話してくださるのですが、三十分もの長い時間に及ぶので驚きました。和上が観音さまは衆生済度のために出張なさるから境内の石仏は全部で何体かを数える度に数が異なるんですヨとおっしゃったことを、さださんは「榮應さんらしい表現」と懐かしそうに振り返り、一周忌の折に差し上げた懐中時計を会場に見せながら「これがここにあると榮應さんが一緒にステージにいてくれるような気がして元気になれる」という話も出てとても印象的でした。その心の描写に、会場には観客は一人もいないかの如くシーンと鎮まり、誰もが聴き惚れていたに違いありません。コンサートに行った方から毎日のように電話がかかり、実際に訪ねて来る方も相当あって、心に染みる歌の舞台、とりわけ石仏の周りは賑やかさが増しています。

 さださんはこの歌の中で「百観音の百菩薩」という表現もなさっています。もちろんたくさんの観音さまのことで、崇敬の念を抱き歌ってくださっています。万人の苦を除く願いを抱き、遍く楽を施す為の大きな希みを持っておられる尊い「観音さま」を私たちは心の支えとし、これからも変わらぬ信仰の道を歩み続けたいと思います。

 観は心(の目)でみる意味に解釈いたします。どうぞ広く大きな心で世の中を見渡し毎日を大切にお過ごしくださいますようお願いいたします。       
                                            知明拝

 平成十九年 行事ご案内   毎月十七日の法要はすべて午後一時からです

 一月一日(月) 修 正 会(元日護摩供・ご祈祷)
 一月十七日(水) 月例法要 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌
 二月三日(土) 節分祭 星祭 午後二時より法要 豆撒き
 二月十七日(土) 月例法要
 三月十七日(土) 月例法要 春彼岸 大施餓鬼会
 四月八日(日) 釈迦降誕会=花まつり 花まつりコンサート(予定)
 四月十七日(火) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌
 四月二十九日(日・みどりの日) 慈音会法要・多宝塔供養祭
 五月十七日(木) 月例法要
 六月十七日(日) 月例法要
 七月十七日(火) 月例法要 盂蘭盆 大施餓鬼会
 七月二十九日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
 八月十七日(金) 月例法要
 九月十七日(月) 月例法要 秋彼岸 大施餓鬼会
 十月十七日(水) 月例法要
 十一月十七日(土) 月例法要 大祭・大護摩供 ならびに境内石仏総供養
 十二月十七日(月) 月例法要(納めの百観音法要)

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   毎月第一日曜日午前九時より 写経の会(小筆を一本ご持参ください)
                但し 二月は十一日(第二日曜日)に変更いたします