ひとくち伝言 平成19年9月

 先日のこと、「まさに降り注ぐような蝉時雨だなぁ」と、楠の木に留まる蝉を呑気に眺めておりましたところ、私に向かって本当に降り注いできたものがありました。蝉の小便です。惜しくも避けきれず、その数滴の雫は見事に私の頭へと命中したのでありますが(避けなければ当たらなかったのかも知れませんが)、その拍子にふと、子供の頃に虫取りをした思い出が蘇って参りました。

 虫取りとは言っても、東京育ちの私の場合、せいぜいトンボや蝉、蝶、それから砂場で遊んでいるとたまに掘り当ててしまった謎の幼虫(当時はカブトムシの幼虫だと固く信じておりました)くらいのもので、捕まえることが出来た覚えもあまりないのですが、それでもワクワクしながら虫を探し回ったものです。中でも蝉は時に厄介なほど自己主張が強いため、格好の標的でした。

 ジリジリと照りつける太陽の下で、虫取り網を構え、蝉に気づかれないように少しずつ木に近付いていく。息を止めてしっかりと狙いを定め、一気に網を振る。網が木肌に到達する、その寸前に消える鳴き声。そして頭にかかる何か…。蝉に馬鹿にされているようで、本当に悔しかったのを覚えています。

 小便を引っかけられたのも久しぶりだなぁと懐かしい気持ちになり、思わず苦笑してしまいました。が、よくよく思い返してみれば、大人になってからも度々、夏の暑い日にぽつっと水滴を感じた事があるのを思い出しました。お天気雨かなにかだろうと、その時は別段気にもかけなかったのですが、そういえば蝉が近くで鳴いていたような気もいたします。…まさか。

 こうして強く意識させられると、夏に感じたお天気雨の全てが蝉の仕業だったように思えてくるから不思議です。ああ、蝉の小便をお天気雨だと思っていたとは、我ながら呑気なものだとあきれてしまいました。

 おもしろいもので、少年の頃の悔しい思い出はいつのまにか微笑ましい思い出に変わっており、お天気雨の記憶は少し情けないものとなってしまいました。どうやら過去というやつも、後ろを振り返ってみる現在の自分の立ち位置が変わることで、微妙にその表情を変えていくもののようです。


                                                  (榮雅)



ひとくち伝言板

◇7月〜9月の行事予定

9月2日 (日)  午前9時より  写経の会
9月17日 (月)  午後1時より  秋彼岸大施餓鬼会(塔婆供養)
 お塔婆は前もってお電話かFAX、eメールにてお申し込みください。1本3,000円です。

10月7日 (日) 午前9時より  写経の会  
10月17日 (水) 午後1時より  月例法要

11月4日 (日) 午前9時より  写経の会
11月17日 (土) 午後1時より  月例法要 並びに 境内石仏総供養

◇今年の献灯会は昼に豪雨が降ったにも関わらず一度は持ち直し、晴れ間を見せてくれました。おかげでランバンサリによる2回のガムラン演奏の内、1回目は外で聞いていただく事が出来ました。
 残念ながら1回目の演奏の直後にまた雨が降り始め、2回目は急遽本堂にて行う事となりましたが、考えようによっては1回目と2回目で違った雰囲気の演奏を楽しむ事ができたのではないかと思います。
     
 収益90,030円をユニセフに寄付させていただきましたことをご報告いたします。
     
◇9月28日(金)午後7時半より、NHK総合にて放送予定の「新トーキョー人の選択」という番組で多宝塔のことが紹介されます。
どうも関東甲信越エリアのみの放送だそうですが、とりあえずご報告まで。