ひとくち伝言 平成22年1月

阿 耨 多 羅 三 藐 三 菩 提

                           平 成 二 十 二 庚 寅  年
                          西暦二〇一〇年 仏暦二五七五年 元 旦

 一年前のこのご挨拶で、般若心経の「羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」について所見を述べさせていただきました。この謁は、仏様方が私たちに『一緒に
成就の世界に行きましょう』と声をかけてくださり、常にそう願うお気持ちを表しておられるのです、と。また元来、「観念」は観じ念ずること、「諦める」は覚る意味であると申し上げました。仏様のことば・お声・お姿を観念し、説いておられるお経の本質を諦めることを励みとして、どうぞ精進を重ねていただきたく存じます。
 さて、この「羯諦羯諦」の段の手前に「阿耨多羅三藐三菩提」という一節があります。これは「羯諦」から「菩提薩婆訶」までと同様に、漢字の似た発音を当てて梵語を音写した部分です。漢語に翻訳されていないということなのですが、敢えてその読みをカタカナに直せば「アヌッタラサミャクサムバーディ」と表すことができるでしょうか。意味は「無常の完全な悟り」であり、その前後を通して『三世の諸仏の智慧を以て彼岸に到る行を志すことにより完全な悟りの境地を得たまえり』と意訳いたします。因みに般若は智慧、波羅蜜(波羅蜜多)は到彼岸(悟りの彼の岸に到る)、また、般若心経の冒頭にある深般若波羅蜜多は完成された智慧と訳されています。
 仏道の修行は到彼岸を目標(目的)としており、彼岸は成就の世界と考えられています。勿論、仏の境地に到達することを「成就」とする場合もありますが、これは日常とかけ離れたた究極の世界であり、求めるのはまことに困難と言わざるを得ません。ところが、皆様は日々生活の中でいくつもの計画を立て、それぞれの目標に向かって努力(精進)しておられるのですから、その一つを成就した時ごとに小さな彼岸を達成すると理解し、それらを積み重ねてこそ最終的な大きな彼岸に到り得ると考えるのはいかがでしょう。レストランのシェフは客の食後の満足そうな顔を見るのが何よりの喜びだそうですが、シェフは美味しい料理を提供するために技を磨き、経験と工夫を積み、客の味覚に応えた時に一つの彼岸に到ったことになります。しかし、これとて日々繰り返されることであり、決して一生に一度と限られるものではありません。
「観音さま」は数多の仏様方の中で最も衆生に近く居てくださる菩薩様です。万人の苦を除く願い(悲)を抱き、遍く楽(慈)を施すための大きな希みを持っておられる尊い観音さまを私たちは心の支えとし、これからも変わらぬ信仰の道を歩みたいと思います。観音さまは慈悲の眼で私たちを見護ってくださりながらご自身の行をお続けになっています。戴く慈悲の心で広く大きく世の中を見、毎日を大切にお過ごしくだされば幸いでございます。平成二十二年が安心の一年となることを願い、併せて皆様の益々のご健勝とご精励をお祈り申し上げます。            知明拝

百 観 音 明 治 寺

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    平成二十二年 行事ご案内   毎月十七日の法要はすべて午後一時からです
 一月一日(金) 修 正 会(元日護摩供・ご祈祷)
 一月十七日(日) 月例法要 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌
 二月三日(水) 節分祭 星祭 午後二時より法要 豆撒き
 二月十七日(水) 月例法要
 三月十七日(水) 月例法要 春彼岸 大施餓鬼会
 四月八日(木) 釈迦降誕会=花まつり 花まつりコンサート(予定)
 四月十七日(土) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌
 四月二十九日(木・昭和の日) 慈音会法要・多宝塔供養祭
 五月十七日(月) 月例法要
 六月十七日(木) 月例法要
 七月十七日(土) 月例法要 盂蘭盆 大施餓鬼会
 七月二十五日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
 八月十七日(火) 月例法要
 九月十七日(金) 月例法要 秋彼岸 大施餓鬼会
 十月十七日(日) 月例法要
 十一月十七日(水) 月例法要 大祭・大護摩供 ならびに境内石仏総供養
 十二月十七日(金) 月例法要(納めの百観音法要)
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  毎月第一日曜日午前九時より 写経の会 小筆をご持参ください
                但し 一月は十日(第二日曜日)に変更いたします