ひとくち伝言 平成24年3月

 この冬の寒さは大変厳しく、草や花も少々縮こまっている様子。例年なら節分が終われば境内の梅の木がちらほらと花を咲かせますのに、今年は三月も近くなってようやく、といったところでございます。節分と言えば立春の前日、すなわち冬と春の季節を分ける日でありますので、暦の上ではとっくに春のはずなのですが…。
 この「暦の上」というやつ。どうやらもう春であるらしいのに、まだまだ寒いじゃないかと、文句のひとつも言いたくなります。気象学の観点から言えば三月から五月の頃を春というのだそうですが、二月の立春からもう春が始まるとすれば、四ヶ月もの期間が春ということになります。なんと一年の三分の一が春。ちなみに、年度を区切りとして一年を四半期に分けますと、四月から六月が春期(スプリングクォーター)だそうです。旧暦の名残りからお正月を新春と言いますので、これもついでに春に含めてしまいますと、なんとなんと日本では一月から六月まで、つまり一年の半分が春と呼ばれる期間なのですね。…なんだか日本がとてもお気楽な国に思えてまいりました。

 もちろん正月や二月の頃は実際のところ、春とはとても思えない寒い日ばかりの時期です。特に立春は、夜が最も長くなる冬至と昼夜の長さが同じになる春分のちょうど中間ですけれど、寒さは一年の中で一番厳しい頃。でも、一番寒さが厳しい頃だからこそ、そこを過ぎれば段々と暖かくなっていく。暦の考え方では、春とは「暖かい季節」ではなく「暖かくなっていく季節」なのですね。とても厳しい時期、ものすごく辛いその瞬間から、春はもう始まっているんです。周りを見渡しても冬の厳しさばかりが目について、春の気配など全く感じられないかも知れない。けれども、たとえ目に見えなくとも、そこかしこにそっと春が生まれている。

 染物の手法に、桜染めという染め方があるそうです。糸を桜の花のようなあの優しい色に染めるためには、桜の花ではなく、花が咲く前の枝を使うのだとか。あの枯れ木のような茶色い枝の中に、桜の花の色がちゃんと準備されていることに驚かされます。この話を聞いて、お大師様の「莫道(いうなかれ)此(この)華(はな)今年(ことし)発(ひらくと)(咲いた華を見て、この華が今年咲いたと言ってはいけない)」というお言葉を思い出しました。種という因が様々な縁と出会って芽吹き、枝を張り、多くの準備が整って花開くのだから、花が開いたことだけを見て花が咲いたと言ってはいけない。冬の枯れ木のような姿すらも含めて花が咲くということなのだ。こう考えると、冬の真っ只中に春が始まることも、とても当たり前のことのように思えてまいります。
 まだもう少し厳しい日々が続きそうではありますが、この厳しさの中にこそ春が生まれつつあるのでしょうか。見逃さぬようにしたいものでございます。


                                             (榮雅)


平成24年 3月〜5月の行事予定

3月4日 (日) 午前9時より  写経の会
3月17日 (土) 午後1時より  春彼岸大施餓鬼会
             お塔婆のお申し込みは前もってお電話かFAX、
              eメールにてお願いいたします。1本3,000円です。
3月20日 (火) 午前7時より午後1時 第三回百年祭写経会

4月1日 (日) 午前9時より  写経の会
4月8日 (日) 花まつり(降誕会)
         午後6時より  花まつりコンサート
            (詳細は別紙をご覧ください)
4月17日 (火) 午後1時より  月例法要

5月6日 (日) 午前9時より  写経の会         
5月17日 (木) 午後1時より  月例法要

◇ 春分の日を中日とする一週間をお彼岸と申しますが、この期間は特に仏道修行に励むと ともに、祖先に感謝を捧げ、ご供養申し上げるのが習わしでございます。3月の17日には春彼岸大施餓鬼会を営みますので、塔婆供養をご希望の方は事前にお申し込みください。
なお、17日には大施餓鬼のお経とは別に、去年の東日本大震災で犠牲となられた方々のために般若心経一巻をお唱えし、供養の誠を捧げたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます。

◇ まだ百年祭記念の納経を受け付けております。お彼岸お中日の20日7時〜13時の間、写経のために書院を開放いたしますので、どうぞご利用くださいませ。なお、観音像は今年秋に予定しております記念会館落慶にて開眼の予定でございます。

◇ 一昨年より花まつりコンサートは直近の日曜日の夕方に行うことにいたしましたが、今年はちょうど8日が日曜日ですので、花祭りの日程どおりの開催でございます。ぜひおでかけくださいませ。収益はNPO「幼い難民を考える会」を通じて東日本大震災の被災地と、カンボジアの子供たちへの援助となります。出来るだけ多くの援助を送る
ために、チケットの他にも楽器運搬費用をお手伝いくださると大変助かります。一口一万円ですが何卒よろしくお願い申し上げます。

また、本来の花まつりである4月8日には花御堂を飾り、お釈迦様をお祀りいたします。午前8時〜午後3時頃まで甘茶のお振る舞いもいたしますので、ぜひお参りくださいませ。