ひとくち伝言 平成24年7月

 この頃は一雨降るごとに緑が濃くなっているようであります。新芽が次々に萌え出ては大きくなり、まるで木々が少しずつ葉を着込んでいくかのよう。四年前に雷に打たれ、一時は枯れてしまったかに見えた銀杏も年々回復し、今年はだいぶ力強く葉を茂らせるようになりました。本当に木々や草花の生命力には驚かされるばかりです。そして、雑草の生命力にも…。
 雑草などという名前の草はありませんが、人間側の都合など知ったことかとばかりに草は生えるわけでありまして、それを放っておけばやはり人間側にはいろいろと困ったことになります。厄介なことにそのしぶとさたるや、時に恐怖を感じるほど。抜いても抜いても抜いても抜いても生えてくる…。抜いた草を土に置いておけば、今度はそこに根付いてしまう。オランダには「雑草は滅びない」という恐ろしい格言があるそうですが、それくらい雑草というのはしぶとい。
 でも、雑草がそれほど生えない場所というのもあります。それは大きな樹の陰になっているところ。全く生えないわけではありませんが、やはりその日の光が届かないお陰でしょうか。草が繁るのをかなり食い止めてくれます。抜いても抜いても生えてくる雑草と、それを食い止める大きな樹。ふと、高野山でお師僧様が仰った「大きな樹を心にお育てなさい」というお言葉を思い出しました。

 一般的な仏教は人間の持つ欲から離れることを目指すのですが、お大師様が伝えた密教の考え方は少し違って、なんと、欲を大事なものと考えます。と言っても、どんな欲でもいいというわけじゃない。自分だけの幸せなんてちっぽけなことを考えるのではなくて、どうせならみんなの幸せを願う。そんな、大きな欲を持ちなさいと説くのです。欲は無くそうと思っても次から次へと湧いてきます。それこそ雨期の雑草以上に。それをいちいち抜こうとしても切りがない。でも、大樹のような大きな望み、大きな願いが育ったならば、無理に小さな欲を無くそうとしなくとも、そんなものは勝手に消えてしまうのだそうです。最初は小さな望みでもいい。少しずつでいいから、自分以外の周りの人も笑顔になれるように願う。その心が、心の樹の栄養になるんですね。そうやって心に育った大きな樹の木陰はきっと、自分にも周りの人にも、居心地の良さと安心感を与えてくれることでしょう。
 心に大きな樹を育てたいなぁ。そして、大勢の人が大きな樹を心に持つようになったらいいなぁ。境内の木々を眺めながら、そんなことを思っております。


                                             (榮雅)


平成24年 7月〜9月の行事予定

7月1日 (日) 午前9時より  写経の会
                   小筆と、納経料千円をお納めくださいませ。
7月9日頃〜15日頃    お盆棚経期間
7月17日 (火) 午後1時より  盂蘭盆大施餓鬼会(塔婆供養)
                   お塔婆は前もってお電話かFAX、eメールにて
                    お申し込みください。1本3,000円です。
7月29日 (日) 午後6時より  献灯会

8月17日 (金) 午後1時より  月例法要

9月2日 (日) 午前9時より  写経の会
9月17日 (月) 午後1時より  秋彼岸大施餓鬼会
9月20日     午前7時より
  〜22日   午後1時まで 第四回(最終)百年祭写経会

11月17日(土) 百年祭記念会館落慶式

◇お盆の棚経は、ご自宅へお伺いし、ご先祖様方のためにお経を上げさせて頂く法事でございます。ご希望される方は、日程の調整をいたしますので、お早めにご連絡ください。また、寺へお越しいただいてお盆のご供養をなさる方もいらっしゃいます。
 どうぞご相談くださいませ。

◇今年の献灯会は7月29日でございます(詳しくは別紙参照)。例年、ユニセフ協会への募金事業として開催して参りましたが、去年はお灯明の収益の半分を、東日本大震災で被災された地域を支援する団体に寄付をさせていただきました。引き続き今年も収益をユニセフと東日本大震災で被災された方々のためにお送りしようと思います。現在のところ、被災した子どもたちのための活動を行っているNPO団体、幼い難民を考える会を通じて青空保育の活動に支援を行おうと考えております。
 ご自身の願いのため、恵まれない子どもたちのために、お灯明を点していただきたく存じます。
 当日はいらっしゃれない方も、ご希望でしたら代わりにお灯明をお供えいたします。どうぞお申し付けくださいませ。