ひとくち伝言 平成25年3月

 あるお婆ちゃんの百歳のお祝いの席での話でございます。ご長寿ながら耳もよく聞こえ、受け答えもしっかりしたそのお婆ちゃんは、たくさんの人にお祝いされて嬉しそうにニコニコなさっていました。ところがどうしたことか、ついさっきまで和やかに会話を楽しんでいらしたのに、急に話が噛み合わないようになり、あれよあれよという間に耳まで遠くなってきた。おや、どうしたんだろう。お疲れになったのかなと思いましたら、「苦手な人が来たもんだから、ボケたふりして誤魔化したのよ」と、ウフフと笑う。しっかり者どころか、ちゃっかり者のお婆ちゃんでございました。
 そんな気丈なお婆ちゃんが、ある時、こんなことを仰いました。
「あたしはずっと子どもたちや孫の面倒を見てきたけど、今はその娘や孫に、こんなに面倒を見てもらってねぇ。本当に有り難いことだけど、世話をかけっぱなしっていうのは、もう用無しみたいで寂しいし、申し訳ないねぇ。」
 自分がもし世話をされるだけの立場だったら、やっぱり同じように寂しさや申し訳なさを感じるのかも知れない。そのお気持ちは、なんとなく分かるような気がいたします。けれども、そこに居てくれるだけでも良いから居て欲しい。できる限りのことをさせて欲しい。お子さんやお孫さん方はきっと、そう思っていらしたたことでしょう。手助けされたり見守られること、ただ居てくださることだって、きっと大事なお役目です。
 やがて、お婆ちゃんはそうやって、ご家族に見守られながら静かに天寿を全うされました。「最後まで面倒を見させてもらえて、本当に有り難かった」と微笑む娘さんの笑顔は、あのお婆ちゃんのニコニコ顔そっくりでございました。それから、「お母さんもこれからはご先祖様と一緒に、私たちのことを見守ってもらわなくちゃ」とも仰った。ああ、面倒を見られたり見守られることを寂しく感じていらっしゃったお婆ちゃんが、今度はまたお子さん、お孫さんのことを見守り、面倒を見る立場になられたのだなぁ。手を合わせて、どうぞお見守りくださいとお願いされ、頼られることは、あのお婆ちゃんにとって、どんなにか嬉しいことだろう。「全く仕方ないねぇ」なんてブツブツ文句を言いながら、笑顔で張り切りそうです。
 もちろん、お願いされなくたって守護してくださるのでしょうが、お願いされたら、そりゃあ気合いの入り方が違うってもんです。こちらにいらした頃より、却って忙しくなさっていたりして。そうやって、守り護られ、助け扶けられて、縁はずっと続いていくのでありましょう。


                                             (榮雅)


平成25年 3月〜5月行事ご案内

3月3日  (日) 午前9時より  写経の会
3月17日 (日) 午後1時より  春彼岸大施餓鬼会
             お塔婆のお申し込みは前もってお電話かFAX、
             eメールにてお願いいたします。1本3,000円です。

4月7日 (日) 午前9時より  写経の会
         午後6時より  花まつりコンサート
            (詳しくは同封のチラシをご覧くださいませ。また、
            コンサート数日前から当日まで、カンボジアの絹織物
            ピダンの展覧会を沙羅会館一階にて開催予定。)
4月8日  (月) 降誕会
4月17日 (火) 午後1時より  月例法要

4月29日 (月) 慈音会総供養

5月5日  (日) 午前9時より  写経の会         
5月17日 (金) 午後1時より  月例法要

◇ 春分の日を中日とする一週間をお彼岸と申しますが、この期間は特に仏道修行に励むと ともに、祖先に感謝を捧げる期間でございます。3月の17日には春彼岸大施餓鬼会を営みますので、塔婆供養をご希望の方は事前にお申し込みください。

◇ 一昨昨年より花まつりコンサートを直近の日曜日の夕方に行うことにいたしまして、今年は4月7日の開催でございます。今回はカンボジアの内戦を実際に経験された久郷ポンナレットさんという方をお招きし、武久さんと私、榮雅で鼎談を予定しております。
なお、収益はNPO法人「幼い難民を考える会」を通じて東日本大震災で被災された地域の子どもたちと、カンボジアの子どもたちへの援助となります。チケットの他に、
楽器運搬のための費用をお手伝いくださると大変ありがたく存じます。一口一万円でございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
また、カンボジアの絹織物、「ピダン」の展覧会をコンサートの数日前から開催し、コンサート当日は購入もできるようにする予定でございます。お釈迦様の前世の物語や天女などが織りこまれたピダンを、この機会にどうぞご覧くださいませ。