ひとくち伝言 平成27年5月

「ここには本当に観音さまが百体いらっしゃるんですか?」
 お参りの方から、こんな質問をいただくことが度々ございます。しかし、残念ながら答えは「いいえ」。昔、一体盗まれて九十九観音になってしまった、なんて噂もありましたが……。実は足りないどころか、お庭の中だけで、約百八十尊の観音さまがいらっしゃいます。その数を聞くと皆さま、びっくりなさいますが、中にはこんな質問をなさる方も。
「観音さまって、そんなに何人もいるんですか?」

 観音さまは三十三の変化身に姿を変えて人々をお救いになることに因み、京を中心とした「西国三十三観音」、関東一円の「坂東三十三観音」、そして結願の一寺を加えた「秩父三十四観音」が「百観音」として古くから巡礼されてきました。明治寺は、この百観音のお姿を一処に建立したことから「百観音明治寺」と呼ばれているのですけれど、番外の観音さまが次々に建立され、昨年にも「瑠璃観音」という観音さまがお仲間入りし、気付けば約百八十尊が立ち並ぶ観音霊場となりました。そのお姿ひとつひとつが、普く(広く隅々まで)世間を照らす明かりでございます。

 観音さまをはじめ、お釈迦さまや阿弥陀さま、お不動さまやお地蔵さまなど、仏さまは数多くいらっしゃいますが、それはいくつも穴が空いている黒い幕越しに明かりを見ているようなもの。ひとつひとつの切れ間から光が差し込んで、まるで夜空の星のように別々の明かりが輝いているように見えるけれど、その暗幕の向こうはひとつの明かりじゃないか。弘法大師、空海はそうお考えになりました。国によって、時代によって、人によって、目の前を覆う悩みや苦しみが少しずつ異なるように、その暗闇の切れ間から差し込む光の見え方も違って当然なのでしょう。その幕の向こうの明かりを、真言宗では大日如来とお呼びしています。
 明治寺にたくさん観音さまがいらっしゃるのは、それぞれの迷いや悩みに合った観音さまと出会い、ご縁を結ぶため。その明かりをひとつでも大事に心に保ち続ければ、例え目の前がどんなに暗闇であっても、その暗闇の外に満ちる、大きな明かりに繋がっていくことと存じます。

 ところで、明治寺の観音さまの正確な数をお知りになりたい方は、是非頑張って数えてみてください。正解の方には記念品を差し上げます。困ったことに、数える度に数が違うのですけれど……。

草野榮雅 拝

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平成27年 5月〜7月の行事予定 

 5月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月9日 (土) 午前9時 坐禅の会
 5月11日〜12日(13日)高野山開創千二百年記念法要 参拝旅行
 5月17日 (日) 午後1時 観音経読誦会 並びに護摩供養

 6月7日・8日 (日・月) 午前9時 写経の会
 6月13日 (土) 午前9時 坐禅の会
 6月17日 (水) 午後1時 観音経読誦会

 7月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 7月17日 (金) 午後1時 盂蘭盆大施餓鬼会
 7月26日 (日) 午後6時 献灯会


◇今年の花まつりコンサートは、ただでさえ調律が狂いやすく、非常に繊細なフォルテピアノの二重奏で曲が演奏されました。また、バッハとモーツァルトの感性の違いが際立つプログラムで、素晴らしい一夜となりました。
 収益金十五万円を、東日本大震災で被害を受けた子どもたちと、カンボジアの子どもたちのために使わせていただきます。

◇古代インドでは1月、5月、9月は特に大事な時期として、戒律を守り精進いたしました。この正五九月に因み、5月の17日には護摩法要を修行いたします。どうぞ御参拝
くださいませ。
また、法要の後、高野山の紹介映像の上映を予定しております。もしも17日に間に合えば、開創千二百年記念法要の様子もご紹介したいと考えております。

◇第二土曜日の午前9時より、坐禅の会を行っております。5月、6月は通常通り行っておりますが、7月8月はお盆の棚経の期間に入りますので、お休みとさせていただきます。