ひとくち伝言 平成31年3月

 お釈迦様の出家は育児放棄じゃないか。こんな疑問をお持ちになる方が稀にいらっしゃるようです。なにせ子どもに「邪魔者」を意味するラーフラという名前を付けたとか、その子が生まれてすぐ出家したとも伝わっておりますし、「子を持つ者は、子のことで悩む」と、家族がまるで苦しみの原因であるかのような言葉を残されています。そういう所だけを見れば、確かに家庭的なお方では無かったかも知れません。まぁ、本当は龍を表す神聖な名前だったのに誤訳されたとか、子が七歳になってから出家したという説もありますし、王位や両親の老後の問題も全て片付けてから出家していますので、決して家族を大事にしなかったわけでは無いのですが。

 実はお釈迦様が臨終の際に、息子ラーフラと言葉を交わす様子がお経に残されています。沙羅林の木陰でお釈迦様は横になり、この世から去り行こうとしているのを、弟子たちは嘆きながら見守っていました。成長してお釈迦様の弟子となったラーフラもそこにいましたが、悲しみに耐えられずにその場を離れます。一人咽び泣き、彷徨い、明日には父がいないことに絶望し、それでも最期に立ち会おうと心を決めて、父の傍らに戻りました。そのラーフラに、お釈迦様が言葉をかけます。
「ラーフラ、悲しむな。お前は父に、子としてなすべきことをしてくれた。私もお前に、父としてなすべきことをなした。私はもう生まれ変わって誰かの親になることはないし、お前ももう誰かの子になることはない。私たちは共に、同じ道を歩んだ。私の体は無くなろうとも、私が説いた法の灯はお前を照らし続ける。励みなさい」
 お釈迦様は父親の努めとして、最も大切な宝である智慧を息子に授け、道を示しました。息子もそれを受け止めました。そして、親子としてお互いを特別な存在としつつも、一人の僧、一人の人間として尊重し、対等な存在として励ましたのです。この息子への想いを踏まえると、先ほどの「子を持つ者は、子のことで悩む」という言葉も意味合いが変わってきます。子どもを親の所有物と考えたり、子どもの人生を支配できると考える自己愛や執着心を、お釈迦様は諫めたのでしょう。
 二月十五日(旧暦なら三月)はお釈迦さまのお命日。お寺によってはこの臨終の場面が描かれた「涅槃図」が飾られます。もし見かけたら、そこに描かれている親子の在り方についても、少し想いを巡らせていただきたく存じます。

草野榮雅 拝

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平成31年3月〜平成31年5月の行事予定 

 3月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 3月9日 (土) 午前9時 坐禅の会
 3月17日 (日) 午後2時 春彼岸大施餓鬼会
      お塔婆のお申し込みは前もってお電話かFAX、Eメールにてお願いいたします。1本三千円です。

 4月7日・8日 (日・月) 午前9時 写経の会
 4月7日 (日) 花まつり(降誕会)
         午後6時 花まつりコンサート
 4月13日 (土) 午前9時 坐禅の会
 4月17日 (水) 午後2時 観音経読誦会(月例法要)
 4月29日 (月・祝日) 午後2時 慈音会総供養

 5月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月11日 (土) 午前9時 坐禅の会
 5月17日 (金) 午後2時 観音経読誦会 並びに護摩供養

◇春分の日前後の一週間、昼夜の長さが丁度同じくらいになる期間がお彼岸です。その少し前の17日にはお施餓鬼の法要を行い、ご先祖様や亡くなった方々をご供養いたします。お塔婆をご希望の方は、事前にお申し込みくださいませ。

◇今年の花まつりコンサートは、4月7日です。かのバッハも迷い、決断をした、その葛藤がテーマのようです。どうぞお楽しみに。また、もしコンサート開催、楽器運搬の費用をお手伝いいただけましたら有難く存じます。よろしくお願いいたします。
 昨年は西日本豪雨災害に対する義援金として、花まつりコンサート収益金留保分より二十万円を日本赤十字を通じて寄付いたしました。改めてここにご報告いたします。