ひとくち伝言 令和元年5月

 謹んで改元のお慶びを申し上げます。
 万葉集の「初春令月 気淑風和」から引用された「令和」は、春の空に令月がのぼり、空気は澄んで、柔らかな風が吹いている様子を表しているそうです。考案者と目される国文学者、中西進氏によれば、令は嘉の意味ですから、令月は美しい月、喜ばしい月という意味。季節は梅の頃、春の月なので、柔らかなおぼろ月でしょうか。この心地よい春の情景を表す一文は、帰田賦(中国後漢の文人 張衡作)の「仲春令月 時和氣清」や、蘭亭序(東晋の書家 王義之作)の「天朗氣清 惠風和暢」を踏まえたものでしょうが、万葉集の文の続きも気になるところです。

「新春の美しい月に、空気は澄んで風は和(なごや)か。梅は美女の化粧のごとく白く咲き、蘭はその身を飾る香のように芳っている。明け方の山頂には雲がたなびき、松は薄絹のような雲をかぶって、まるで天蓋に覆われているようだ。谷に立ち込める霧の中に鳥の声が響く。庭に蝶が遊び、空には雁が飛び行こうとしている。この空を屋根とし、大地を床として、睦まじく酒を飲み交わしている。言葉や気遣いの必要もなく皆がくつろいでいて、満ち足りている。どうしてこの心持ちを、詩にせずにいられようか。中国では梅の詩が多く詠まれてきた。梅を愛でる心は、今も昔も(中国でも日本でも)違いは無いだろう。我々も梅の詩をいくつか詠んでみよう」

 先人の模倣から入りつつも、そこからの展開はまるで違っています。眼前の美しい自然を描写し、その何とも言えぬ和やかな雰囲気の中で、先人に倣って自分たちもまた自分たちなりの詩を紡ごうと、「和歌」を詠む。和は春風だけでなく、そこに集う人々の和も表しているのでしょう。国の名前を倭(やまと)から大和(やまと)と表記するようにしたのもこの頃のこと。和という字には、いろいろな想いが込められているようです。

 ちなみに、長阿含経や大般涅槃経、華厳経といったお経の中には令和という字が出てきます。「お釈迦さまの言葉は柔らかで嘘や暴言などは無く、争う人たちを仲良く、和やかにさせた(令和合)」といった具合です。令は漢文ですと「〜させる」という意味を持ちますが、これは命令のような強制ではなく、仕向ける、あるいは導くというニュアンスでしょうか。お釈迦さまの智恵に倣い、一人ひとりが和かな言葉を心がけて、令和という時代を和やかな時代にしていきたいものです。

草野榮雅 拝

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令和元年 5月〜7月の行事予定

 5月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月11日 (土) 午前9時 坐禅の会
 5月17日 (金) 午後2時 観音経読誦会 並びに護摩供養

 6月2日・3日 (日・月) 午前9時 写経の会
 6月8日 (土) 午前9時 坐禅の会
 6月17日 (月) 午後2時 観音経読誦会

 7月7日・8日 (日・月) 午前9時 写経の会
 7月17日 (水) 午後2時 盂蘭盆大施餓鬼会
 7月28日 (日) 午後6時 献灯会
◇例年、五月は一年を三分割した場合の節目として護摩を修行しておりますが、今年はこの令和という時代が良き時代となりますよう、共にご祈願いただきたく存じます。どうぞお詣りくださいませ。

◇お釈迦様の誕生日に因んで開催している花まつりコンサートも、今年で二十五回目を数えました。四半世紀、続けてこれましたのも、武久源造氏をはじめ、皆様のご協力のお陰と感謝しております。おいでくださった方々には、素晴らしい響きと満開の夜桜の特別な時間をお過ごしいただけたことと存じます。純益、110,920円はすべて、災害等発生時の寄付金の備えとして積み立ていたします。現在、総額は223,599円となっております。