ひとくち伝言

  吐故納新 (古きを吐きて新しきを納る)

                  令 和  三  辛 丑  年  正 月

 謹んで新たな年のご挨拶を申し上げます。
 しかしながら「よいお年を」や「本年もどうぞよろしく」といった言葉もマスク越しで、どうにも息苦しさを感じてしまいます。思えば令和二年は、吐く息の飛沫や呼吸の乱れが気になったり、鬼を滅する呼吸が話題になったりと、呼吸が注目される年でありました。マスクのせいで呼吸が浅くなることもあるそうで、時には身体を伸ばし、深呼吸をするのが良いようです。

 お経の中にも、呼吸について「姿勢を整えて鼻で呼吸し、入る息と出る息を意識しましょう」と、まるでヨガのインストラクターが説明してくれそうなことが説かれています。それもそのはずで、ヨーガとは本来、身体を制御して精神の統一をすること。お経では瑜伽と表されています。ちなみに真言宗は別名、瑜伽密宗とも呼ばれます。一部では、日本最古のヨガスタジオは高野山だと言われているのだとか。弘法大師は瑜伽道場として高野山を開きましたので、間違いではないですが……。

 増一阿含経や安般守意経など、種々の経典論書に、様々な呼吸の仕方が説かれています。例えば「自分の呼吸を観察して、息が短ければ短い、長ければ長いと、一呼吸一呼吸をしっかりと意識する」とか、「吐く息を数えて、十まで数えたら一に戻って繰り返す」とか、「息は鼻からお臍へ吸い込む」とか、「吐く息を長くする」など。読経も一種の呼吸法ですね。そして、この呼吸によって段々と心が安定してきたら、より深い瞑想や観想へと入っていくわけです。効能も、「身体や目が疲れ難くなる」、「心に憂いが無くなる」、「優しい気持ちになる」など、良いこと尽くめ。瞑想までは難しくても、しっかりと吐き切り、しっかりと吸う呼吸を心掛けるだけで、心身には良い効果があります。
 華厳経に「吐故納新」という言葉があります。元は荘子の言葉だそうですが、翻訳をする上で引用したのでしょう。「古きを吐きて新しきを納る」と読み、身体の中の古い空気を吐き出し、新鮮な空気を身体全体に取り込むという、呼吸の肝要を表しています。吐かないと、吸えない。当たり前のことですが、大事なことです。

 息に限らず、力を出し尽くした時に初めて得られるものがあります。新たな生活習慣のためには、過去の慣習を手放す必要もあるかも知れません。何かを失ったことばかりに捉われ、代わりに得たものがあるのに気付かないこともあるでしょう。この新年の機会に、手放すべきもの、守り続けるもの、新たに得るものについて考えてみるのもよろしいかと存じます。

草野榮雅 拝

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令和三年  行事ご案内 毎月十七日の法要はすべて午後二時からです
                       (どなたでも御参加いただけます)

 一月一日(金) 修 正 会(しゅしょう え )(護摩修行・祈祷)
                午前六時および午後二時頃、本堂にて修行
 一月十七日(日) 初観音大護摩供
 二月二日(火) 節分会 星まつり
             午後二時より法要、豆撒き
 二月十七日(水) 観(かん)音(のん)経(ぎょう)読(どく)誦(じゅ)会(え)(月例法要)
 三月十七日(水) 春彼岸 大施餓鬼会
 四月八日(木) 釈迦降誕(ごうたん)会(え)(花まつり)
 四月十七日(土) 観音経読誦会
 四月二十九日(木・昭和の日) 慈音会法要・多宝塔供養会
 五月十七日(月) 観音経読誦会(護摩供養)
 六月十七日(木) 観音経読誦会
 七月十七日(土) 盂蘭盆 大施餓鬼会
 七月二十五日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
 八月十七日(火) 観音経読誦会
 九月十七日(金) 秋彼岸 大施餓鬼会
 十月十七日(日) 観音経読誦会
 十一月十七日(水) 境内石仏総供養大護摩供
 十二月十七日(金) 観音経読誦会(納めの百観音法要)

● 毎月十七日 観音経読誦会(月例法要)
毎月午後二時より、太鼓の音に合わせて妙法蓮華経観音経と般若心経をご一緒にお唱えいたします。法話の後は茶話会をお楽しみください。
どなたでもご参加いただけます。
正月、五月、十一月は護摩法要、三月、七月、九月は施餓鬼法要を併せて修行いたします。

● 毎月第一日曜日ならびにその翌日の月曜日
午前九時より 写経の会 (小筆と納経料千円をご用意ください)
※正月は第二日曜日の十日と十一日。二月は、第一日曜日とその翌日、七日と八日に行います。
 なお、八月はお休みです。

● このコロナ禍のため未定の行事や、予定していても直前の変更をせざるを得ない場合もございます。何卒ご了承くださいませ。

● 今年は立春が二月三日となるため、節分は二月二日 になります。お間違えのないようご注意ください。

令 和 三 年 年回表
一周忌  令和二年寂
三回忌  平成三十一(令和元年)年寂
七回忌  平成二十七年寂
十三回忌 平成二十一年寂
十七回忌  平成十七年寂
二十三回忌 平成十一年寂
二十七回忌 平成七年寂
三十三回忌 平成元年寂