ひとくち伝言

 自他不二 (自と他は分かてず)

                  令 和  四  壬 寅  年  正 月

 謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
 正月の伝統的な遊びと言えば、凧揚げや羽根つき、福笑いなどでしょうか。みんなで集まるのは少し難しい状況かも知れませんが、出来れば笑って新年を過ごしたいものです。
子どもたちが遊び方を決める時、やりたい事が一致していれば何も問題はありません。しかし、違っている時だって当然あります。「僕は外で凧揚げがしたい」「私は福笑いをしたい」「かくれんぼをしよう!」などなど。そんな時の決め方はいろいろあるでしょうが、もしそれぞれがやりたい事を主張して、誰も譲らなければどうなるでしょうか。きっと、話がまとまらず険悪な雰囲気になって、結局はみんなが面白くない時間を過ごすことになるでしょう。だから大抵の場合は妥協して、誰かの意見が採用されます。自分の意見ではなくとも、それがよっぽど嫌な遊びじゃなければそれなりに楽しくなってくるもの。一番の目的は楽しく遊ぶことで、我(が)を通すことではない筈ですから。ちょっとの妥協や譲り合いが、周りのみんなの楽しい雰囲気を作り、それが自分にも還ってくる。「自分」というのは外からの影響を、自分で思っているよりもずっと強く受けているものです。周りとの関係が険悪なら自分も嫌な気持ちになり、良い雰囲気なら心地良い。自分の内側と外側は、切り離せないほど密接に繋がっています。

 分子生物学の視点では自分の外、つまり環境と自分をきっちり区別することはできないのだそうです。細胞や分子のレベルでは外からの分子が取り込まれたり老廃物が分解、排出されたりと、常に身体は外の分子と作用し合い、変化している。いくら個体に見えていても、それは分子が動きながらぼんやりとまとまっている状態があるだけ。動き続ける分子の「淀み」のようなものが生命活動なのだとか。そう考えると、「自分」は環境から独立しているわけではなく、環境と分けることのできない存在ですね。周囲の流れと無関係ではいられません。
仏教では、このことを自(じ)他(た)不(ふ)二(に)と言います。他人や環境との、縁という相互作用によって自分がある。身体の分子だけではなく、感情や思考もまた外との情報のやり取りで常に変化しています。他人のネガティブな感情に傷ついたり、誰かの笑顔に癒やされたりと、感情や思考も独立していません。不可分です。だから、自分が心地良い状態になろうと思ったら、他人や環境も同じように大事にしなければいけない。子どもたちの遊び決めのように、時には我を抑えることも必要でしょう。

 今年もまだウイルスへの注意が必要な状況ですが、誰かに言われて嫌々やる「自粛」よりも、自分と周りとをより良い状態にしようとする「自覚」の方が大事かも知れません。どうぞ自他共に、お健やかにお過ごしくださいませ。

草野榮雅 拝

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令和三年  行事ご案内 毎月十七日の法要はすべて午後二時からです
                       (どなたでも御参加いただけます)

 令和四年  行事ご案内 
 一月一日(土) 修 正 会(護摩修行・祈祷) 午前六時および午後二時頃、本堂にて修行
 一月十七日(月) 初観音大護摩供
 二月三日(木) 節分会 星まつり 午後二時より
 三月十七日(木) 春彼岸 大施餓鬼会
 四月八日(金) 釈迦降誕会(花まつり)
 四月二十九日(金・昭和の日) 慈音会法要・多宝塔供養会
 五月十七日(火) 観音経読誦会(護摩供養)
 七月十七日(日) 盂蘭盆 大施餓鬼会
 七月二十四日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
 九月十七日(土) 秋彼岸 大施餓鬼会
 十一月十七日(木) 境内石仏総供養大護摩供
 十二月十七日(土) 観音経読誦会(納めの百観音法要)

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  ● 毎月十七日 観音経読誦会(月例法要)
     毎月午後二時より、太鼓の音に合わせて観音経と般若心経をご一緒にお唱えいたします。どなたでもご参加いただけます。
     正月、五月、十一月は護摩法要、三月、七月、九月は施餓鬼法要を併せて修行いたします。

  ● 毎月第一日曜日ならびにその翌日の月曜日
     午前九時より 写経の会 (小筆と納経料千円をご用意ください)
     ※一月は第二日曜日の九日と十日、八月はお休みです。

  ● 新型コロナウイルスの感染状況によって、予定を変更する場合もございます。何卒ご了承くださいませ。

令 和 四 年 年回表
   一周忌  令和三年(2021年)寂
   三回忌  令和二年(2020年)寂
   七回忌  平成二十八年(2016年)寂
   十三回忌 平成二十二年(2010年)寂
   十七回忌  平成十八年(2006年)寂
   二十三回忌 平成十二年(2000年)寂
   二十七回忌 平成八年(1996年)寂
   三十三回忌 平成二年(1990年)寂