ひとくち伝言 令和4年3月

お寺には普通の家には無い珍しいものが沢山あるようです。小さなお子さんがいらっしゃると広い畳敷きに興奮したり、太鼓や木魚を叩きたがったり、仏像に怯えたり……。つい先日も、ご法事のためにお寺に来た五〜六歳くらいの女の子がお父さんに質問責めをしていました。
「これなに?」
「お経を飾ってるんだね」
「あ、これは?」
「それはストーブだよ」
ん?いや、それは寺特有のものじゃ……。え?ストーブを知らない?女の子が指差していたのは、普通のガスストーブです。燃焼パネルが付いていて、真っ赤になるやつ。でも確かに考えてみれば、今の新築住宅の暖房設備はエアコンと床暖、ファンヒーターくらいかも知れません。世代格差を感じておりますと、女の子がおもむろにストーブに触ろうとする。お父さんが慌てて止めたので火傷はしませんでしたが、危険を危険と知ることの大切さを改めて感じました。
私の曾祖母は、幼い私にストーブをわざと触らせて、火の危険さを教えてくれました。現代なら虐待と言われそうな教育方針ですが、お陰で危険には敏感になったような気がします。火が熱いと知識で知っていることと、実際にその熱さを体験することでは全く違う。肌が感じる熱、光の強さ、匂い、音、空気の対流、熱が伝わる時間の速さ、みんなついその暖かさの近くに寄り集まってしまうこと、少し扱いを間違えれば大変なことになってしまう不安。受け取る情報の量が圧倒的に違います。
テレビやインターネットのお陰で、個人が利用できる知識や情報は格段に増えました。でもそうした情報は、物事のごく一部に過ぎません。どんなに文字を読み映像を見つめたとしても、それは新聞の見出しのように圧縮された表面的なものです。それを解凍して補うのは、受け取る側の経験と、それを元にして働かせる想像力なのでしょう。実はこの情報社会こそ、実体験が重要な意味を持つ社会なのかも知れません。

厳冬を過ぎ、春が近づいております。梅の香りの混じる風、音の響き方の違い、朝の光、影ができる場所の変化、肌が感じる心強い暖かさ、心のほぐれ。天気予報では伝わらない、たくさんの情報が溢れています。見出しばかりに頭を埋め尽くされないよう、ご自身の肌、ご自身の心で、春を感じてみるのはいかがでしょうか。


草野榮雅 拝

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令和4年3月~5月の行事予定

 3月6日・7日 (日・月) 午前9時 写経の会
 3月17日 (木) 午後2時 春彼岸大施餓鬼会
             お塔婆のお申し込みは前もってお電話かFAX、
             Eメールにてお願いいたします。1基三千円です。

 4月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 4月8日 (金) 花まつり(降誕会)
 4月17日 (日) 午後2時 観音経読誦会(月例法要)
 4月29日 (金・祝日) 午後2時 慈音会総供養

 5月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月17日 (火) 午後2時 観音経読誦会 並びに護摩供養


◇ 暑さ寒さも彼岸までと申しますが、一年を二つに分けた時の区切り、昼夜の長さが同じくなる春分と秋分の時期をお彼岸と申します。
この彼岸とはお経に出てくる「波羅蜜多(はらみた)のこと。一方に偏らない智慧を表します。
太陽が真西へと沈みゆく軌跡に想いを託し、ご供養の機会としていただきたく存じます。
お塔婆を立てる方は、事前にお申込みくださいませ。一基、三千円のご志納となります。

◇ 今年の節分祭は新型コロナウイルスの不安の中での開催となりましたが、できる対策は全て行い、なんとか無事に春迎えの行事を行うことができました。
至らぬ点も多々ございましたが、皆様のご協力に助けられ、大きな問題なく開催できましたことをご報告するとともに、改めて御礼を申し上げます。

◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
  https://www.facebook.com/meijidera/