ひとくち伝言 令和4年5月

「毎日、心が不安でたまりません。安心するにはどうしたらいいですか?」
「その不安な心をここに出してごらん。そうしたら安心させてあげよう」
「……どうやって出すのでしょう。心の中をよく探しましたが、実体の無い不安を取り出すことなどできません」
「ほら、すでに安心している。不安という実体が無いのだから」

これは禅宗の祖、達磨(だるま)禅師が弟子に説いた問答です。この出せないものを出せという話、覚えがありませんか?「屏風から虎を出してくれたら捕まえましょう」という一休とんち話は、この話が元だそうです。不安に実体が無いということは、それは自分の心が作り出している妄想のようなもの。眼前に本物の虎がいるわけでもないのに、いろいろと想像して屏風の虎を怖がるようなものです。不安は心が作り出している幻に過ぎないと気付くことが安心(あんじん)、安定した心なのだという教えです。
でも、本当に不安で不安で、どうしようもなく悩んでいる人に、この言葉だけを真似て「その不安を出してみてください。出せないでしょ?」なんて答えたら、まぁ、多分怒られます。その想像が現実化することを心配しているのに、妄想だと言われて納得できるなら最初から悩みません。この話の大事な点は、心の中をよく探してみること、よく観察してみることなのだと私は思います。

鉄鋼王と呼ばれたアメリカの大富豪、アンドリュー・カーネギーはある時、重く伸し掛かる重圧や次々に起こる問題に心が耐えきれなくなり、自ら命を断とうとしました。遺書に、なぜこのような心境になったかを全て一つ一つ書き出しているうちに、彼はある事に気付きました。書く前は悩みや不安が千個はあると思っていましたが、実際に書き出してみると七十個くらいしか無い。その七十個も、自分が悩んでも仕方ない事、今すぐ対処する必要の無い事、些末な事が沢山含まれていた。本当に緊急性の高い問題はそれほど多くない。彼は、これなら対処できると思い、死ぬのをやめたそうです。
不安は心の余裕を奪い、実際以上に問題を大きく感じさせます。全て把握できていると思いがちな心ですが、分かっていない事も多いもの。瞑想での心の観察が難しければ、カーネギーのように、感じている事を一つ一つ紙に書き出してみるのも手です。心の中を整理することで、少し冷静に物事が見えてきますよ。屏風の虎も、見え方が少し変わるかも知れません。

草野榮雅 拝

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令和4年5月~7月の行事予定

 5月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月17日 (火) 午後2時 観音経読誦会
                 並びに護摩供養

 6月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 6月17日 (金) 午後2時 観音経読誦会

 7月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 7月17日 (日) 午後2時 盂蘭盆大施餓鬼会
 7月31日 (日) 午後6時 献灯会

◇献灯会は例年通りに行う予定ではおりますが、なかなか先が読めない状況ですので、場合によっては直前の変更もあろうかと思います。
何卒ご了承ください
   
◇いろいろな宗派のお坊さんが、電話で質問や相談に応える仏教情報センターのユーチューブチャンネルができました。
まだまだ本数は少ないのですが、これからどんどん、いろんな宗派のお坊さんの話をアップロードしていく予定です。
ご覧になれる方は是非、チャンネル登録をお願いいたします。

https://www.youtube.com/channel/UCxdgJd6vqctSaAiCsF7Ka4g

◇7月、8月はお盆の時期です。
ご希望の日時がある方は、お早めにご連絡ください。
お盆はご先祖様、お亡くなりになった方をご自宅にお迎えする行事ですので、 僧侶がお伺いしてご供養いたします。
しかしながら、もしご自宅で集まることがご不安なようでしたら、お寺にお位牌をお持ちいただき、ご供養するのも宜しいかと存じます。

◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
  https://www.facebook.com/meijidera/