ひとくち伝言 平成9年12月(86号)



 仏教テレフォン相談をやっていますと時に「参った」と思うようなことに出会います。先日は「除夜の鐘は、なぜ百八つ鳴らすのですか」というのが来ました。「はい、それはですね、百八煩悩から来てます」『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり』とあるでしょう、鐘の声には仏の説法が響いているわけです。つまり鐘が一つ鳴るごとにひとつづつ、心から煩悩が消えて行くようにという思い方がそこに込められているのです。我々には煩悩が百八つあると言われてますから、百八つの鐘の音を静かに聴いて、その一年にたまった心の垢をすっかり清めて、すがすがしく新年を迎えましょうということなんですね、ハイ」。
ここまではよかったんです、楽勝と思ってました。すると相手はこう言ってきました。「百八つの煩悩って、どんなものがあるんですか?」。百八煩悩を全部言ってみろというのであります。「えーと…」と口ごもったまま、降参でありました。慢心という煩悩に足をすくわれたようです。
 それについて、うまい説明の仕方があります。人生の苦労を四苦八苦と言いますから、四×九=三十六と八×九=七十二を足すとほら百八になるでしょうという説明です。これを発見した人はすごいと思いますが、これは明らかにウソだというのはおわかりですね、掛け算九九の語呂合わせは日本語なのですから。とりあえず宿題にさせてもらって、家へ帰って調べてみました。ひとつだけ確かなのは、百八つの煩悩を一々数えた人がいるということで、これだけでも感心してしまいますね。実は煩悩を百八つに数えるのも数え方のひとつににすぎないのですが、一例をご紹介します。
 説明しやすいのは『倶舎論』という仏教哲学の論書にある説で、九十八随眠(ずいめん=煩悩)と十纏(じってん=随煩悩)を合計した数が百八になるというものです。随眠とは、貧瞋痴の三毒(むさぼり、怒り、愚痴=未明ゆえの迷いと執着)に始まって、慢、疑、有身見、辺執見、邪見、見取見、戒禁取見等々です。それらがいろいろな範疇に分類されて九十八随眠となります。そして十纏とは、無慚(内に恥じないこと)、無愧(人に恥じないこと)、悪作(後悔)、睡眠、★挙(じょうこ=たかぶること)昏沈(こんじん=沈みこむこと)、忿、覆(隠しておくこと)、嫉、慳などです。だけど別の立場では、放逸や懈怠、不信、恨、諂(へつらい)などを、あるいは失念を煩悩に加える立場もあります。ほら、どうしても思い出せないことがあると、何も手につかなくなるじゃありませんか。


(栄)












   ひとくち伝言板   


12月の行事ご案内

12月  6日(土) 午後1時半より 法話の集い

12月  7日(日) 午前9時より  写経の会

12月 17日(水) 午後1時より  百観音月例法要−納めの観音供−

12月10,24日(水) 午後6時半より 坐禅の会

12月 14日(日) 午後4時より  阿字観入門(第2日曜夕方)


※12月7日の写経の会が終わると、恒例の「一足早い年越しそば」をいただきます。
 多分、十度目の年越しそばとなるのではないでしょうか。写経の会も来年5月で満10年になるということになります。ということは、本堂が落慶してから、来年の4月で満十年になるということでもあります。「おかげさま」の10年です。

※12月9日(火)午後1時より 九段会館大ホールにて(当日券あり)
成道会(じょうどうえ)の集い 入場料:1000円
*お釈迦様がお悟りをひらかれた12月8日にちなんでの行事です*

1:00 成道会式典 1:30 講演「自分と他人」 橋爪良恒師
         2:50 講演「笑道仏心」  ポール牧さん
主催(問い合わせ先):東京都仏教連合会 事務局 徳蔵寺 03-3491-2571
九段会館:地下鉄東西線または都営新宿線 九段下駅下車

※「ひとくち伝言」の本文で説明しきれなかった部分を、補足いたします。
・有身見(うしんけん)   :「我」とか「我がもの」という執着にとらわれた見解
・辺執見(へんしっけん)  :両極端の見解、つまり「一切は死によって無に帰する」という断滅論と、「一切は永遠に不変である」との常任論。仏教は両方とも取らない。
・邪見(じゃけん)     :正しい因果の道理を否定する見解
・見取見(けんじゅけん)  :自分の見解だけが正しく、他者の見解を誤りと決めつける見解。
戒厳取見(かいごんしゅけん):誤った戒律や誓いを、悟りへ導くものと思い込む見解。

※ 来年もライフカレンダー(来富歴)を、どうぞご利用ください。
僧侶達の手弁当(ボランティア)の仏教情報センターを維持するために、少しでも大勢の方にご利用をおすすめしたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

PRのコーナー
12月4日(木)〜9日(火)11:00〜7:00(最終日6:00迄)
未嶺会絵画展(日本画)会場:ギャラリー高野(新宿高野第2ビル3階)
同会会員の風間小枝(ささえ)様から、切手とともに、ご案内をいただきました。



東京都中野区沼袋二ノニ八ノ二〇
百観音明治寺 草野榮應 3386-3937番