ひとくち伝言     平成10年9月(93号)





 学研の「漢字源」で『命』を引くと、まず「天のさしず、いい付け」とあるんです。生命とは「生きている命」ではなくて「生きよとの命令」のことなんですね。そう思ってみると、別な景色が見えてきそうです。
 再び「ほとけさまの物語散歩」(小松庸祐著)に題材をいただきます。
 昔、動物の寿命を定める神がおられました。最初、神さまはすべての動物に、公平に三十年の寿命を与えようと思われたんだそうです。
 最初に馬を呼び「おまえを三十年生きさせてやろう」と言うと、馬は驚いて「ワラやまぐさばかりで三十年もこき使われるのは、まっぴらです。」と言ったので、馬は十年の寿命となりました。次に犬を呼び、同じことを言うと、犬の言うには、「主人に仕えて泥棒の番をするなんて、夜もおちおち眠れません。十五年で結構です」。次に猿を呼んで「三十年やるぞ」と言うと、「わたしゃ猛獣に追われて木の上暮らし。尻が赤いだの、猿顔だのとばかにされるなら、二十年で十分です。」
 最後に呼ばれたのが人間でした。「おまえにも三十年をやろう」。すると人間はそれじゃ足りないと言うのです。神さまはあきれて理由を尋ねると、「やっと一人前に成長して、いよいよ油が乗る頃におしまいじゃ、なさけないです。」と言うので、馬の分の二十年をもらうことになりました。それでも人間は不服を言いました。「だって五十歳では子供がやっと一人前になって、やれやれと思う頃です。そこでおしまいじゃあ哀れです」。かくして犬の分をもらいました。しかし、それでも足りないと言います。「神さま、六十五歳と言えば、やっとかわいい孫ができて、生涯の疲れを癒す時期です。そこでいとしい孫と別れるなんて、くやしいです」。そんな訳で、人間は七十五年の寿命をもらいました。だから、最初の三十年は気楽な人生ですが、次の二十年は馬車馬のように、次の十五年は犬のように用心深く、次の十年はしわくちゃの顔でキイキイ小言を言いながら、(反省ばかりさせられて?)、暮らさなければならないのだそうです。
 これを法話の会でお話してみました。ナルホド、ナルホドと聴いてくださるお年寄りのニコニコ顔を見ながら、この小話が持っている不思議な魅力を感じておりました。「そうそう、人間の欲っていうのは、しょせん切りがないノヨネ。」というメッセージが伝わった手応えがあります。これを真に受ける人はもちろんいませんでしたが、どこか深いところで皆納得というか、ほっとしている気持ちも、確かに伝わってくるのでした。

(榮)












   ひとくち伝言板   

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平成10年9月の行事ご案内

9月 6日(日)  午前9時より  写経の会
9月 17日(木) 午後1時より  百観音月例法要と秋彼岸おせがき法要
9月9・23日(水) 午後6時半より  坐禅の会
9月 13日(日) 午後4時より  英語版阿字観(第2日曜)



 不順な天候の夏でしたが、皆さまいかがお過ごしだったでしょうか。
 那須町や西郷村の大洪水のニュースには驚きました。あの大暴れしたのが余笹川という風流な名前で、普段は5p巾の小川なのだそうです。ふるさとの近くで犠牲者が出たり、家や牛が流れたという報道を聞くと、心が痛みます。
 那須雲照寺のある西那須野町は、あの那須町から20`ほど南西にあり、もともと水のないところで苦労した土地ですから、大きな被害はあまりなかった模様です。でも、田畑が水につかったり、東北線や国道4号線が通行止めになったりしていますので、洪水の被害と無関係ではいられないというところのようです。
 それにしても自然というのは、とんでもないことをやってしまうものですね。

 7月26日の献灯会は、今年もたくさんのお参りをいただき、にぎやかな中で無事行うことができました。
 結果から言いますと、諸経費を差し引いて¥78,802円を、日本ユニセフ協会に寄付させていただきました。お手伝いやご奉納など、大勢の方からご協力・ご協賛をいただき、ありがとうございました。

 「漢字源」の解字のところでは「毒」をこう説明しています。
「『生(くさの芽ばえ)+母(子をうむ)』で、もと薬草のエキスをとって、生殖強精剤に用いたもの。刺激が強く、常用するとひどい害を及ぼす。」
 もともと毒は薬草を意味したのです!漢字の成り立ちは奥が深いですね。

 仏教ではよく「三毒」が出てきます。それは「貪欲(とんよく=むさぼりの煩脳)瞋恚(しんに=怒りの煩悩)、愚痴(ぐち=愚かな執着の煩悩)のことを意味しているのはご承知かと思います。さて、これらがなぜ「毒」に例えられるかと言えば、体の外にある時は何の害もないけれども、自分の中に入るとじわじわと苦しくなり、心身が蝕まれてゆくということが、共通しているからです。
 自分の外にある毒よりもまず、すでに自分の内面で作用し、自分を苦しめている三毒を見据えなさいと説いたのが、お釈迦さまだったわけです。

 切手代感謝録 魚田様、杉浦様、畠山様、松本重夫様、藤田いくみ様、月出様感謝いたします。


演奏会のご案内
10月13日(火)午後6時半より 於 中野ゼロホール
ピアノ協奏曲の夕べ(チャリティ) 入場券3500円前後
〜土岐壽代さんをはじめ、4人のソリスト達の、華麗なる挑戦〜
日本ニューフィルハーモニー管弦楽団/指揮・平井哲三郎

10月2日(金)午後7時 於 東京オペラシティ・リサイタルホール
ドゥオ・リサイタル(硲はざま 美穂子Violine徳田敏子Piano)3000円
ベートーベン;ViolineとPianoのためのソナタ8番、チャイコフスキー;なつかしいとちのおもいで、ストラヴィンスキィ,フォーレ