ひとくち伝言 平成17年1月

悲観及慈観 常願常瞻仰

平成17 乙酉年 
西暦2005年 仏暦2570年 元旦 

 平成十六年は多くの自然災害が発生した年でありました。上陸した台風の数が記録的であったこと、大雨、洪水、殊に中越の地震、これらに伴なう土砂崩れ等々。被災地の方々には心よりお見舞いを申し上げますと共に、一日も早く元の生活を取り戻してくださることを願って止みません。またイラク情勢など、内外の諸問題も明るい方向に向いて、世界中が平和で満たされることを期待したいと思います。そして、平成十七年が皆さまにとって幸せな年でありますよう、併せて日々ご精進くださることをお祈り申し上げます。

 さて唐突ですが、経文には梵語、漢文、和文のものがあります。その他の国々の言語にも翻訳されており、英文で表わされた経文が存在することは有名です。ところで私たちは漢字で書かれているお経をお唱えしますけれども、その漢字にはいくつかの読み方があることにお気づきでしょうか。それは、観音経や般若心経、十句観音経、舎利礼文などは呉音、般若理趣経というお経は漢音で詠むということです。例えば「帰命」は呉音では〈きみょう〉、漢音では〈キベイ〉、「般若」は〈はんにゃ〉〈ハンジャ〉、「菩薩」は〈ぼさつ〉、〈ホーサー〉のような違いになります。また、唐音で唱えるお経もあるのですが、これについては別な機会に譲ることにいたします。

 香川県に観音寺という市があります。四国八十八所第六十九番札所である観音寺が市の名前になっています。しかし普通は「観音」を〈かんのん〉と読みますから、音便の法則からいうと、観音寺市は特別な呼び方に当たるかも知れません。音便は「観音経」を〈かんのんぎょう〉、「心経」を〈しんぎょう〉と読むように「ん」などの次の発音を変化させることをいいます。「発車」を〈はつしゃ〉と読まずに〈はっしゃ〉、「一本」を〈いっぽん〉、「因縁」を〈いんねん〉と読むのも、いずれも発音しやすいように音便化しているわけです。このような法則からすると、NHKをはじめとするメディアのほとんどが「河川敷」を〈かせんしき〉と発音しているのは妙な感じがしてならないのです。もちろん例外もあって、「喚起」や「換気」は〈かんき〉で良いのですけれども、「歓喜」は〈かんぎ〉のほうが耳に優しいような気がします。お経は独特の読み方をするとお感じになるのは、主に漢音・呉音・唐音の範疇で伝統に即し、音便などの法則を重んじていることにほかなりません。日本語の中に息づいている仏教用語がいかに多いかを考え合わせ、言葉を見直す機会を持ってくだされば幸いに存じます。

 表題の「瞻仰」は、慣用的には漢音の〈せんぎょう〉ですが、観音経の中では呉音で〈せんこう〉、音便で変化させて〈せんごう〉と読んでいます。仰ぎ見る、仰ぎ慕うの意味です。では、悲観・慈観について考えてみましょう。観音経偈文の《真観清浄観、広大智慧観》に続く一節(観音さまがこの世をご覧になるお力を表す五観=真観・清浄観・広大智慧観・悲観・慈観=の内の二つ)で、悲観は人々を苦悩から救い出す心、慈観は人々の幸福を願う心で観音さまが観てくださることです。悲は「抜苦」、慈は「与楽」とご説明する場合もあります。ですから、悲観は決して「悲しんで力をおとす」意ではなく、むしろ応援する、力になろうとする意味であることを知ってくださればと存じます。観音様と親しみをこめてお呼びする観世音菩薩は、世の中の音(声)を観じて(みて)くださる慈悲の仏様です。その観音様は今なおご修行を続けておられて、私たちに身を以て教え諭してくださいます。私たちは、万人の苦を除く願いを抱き遍く楽を施すための大きな希みを持っておられる尊いお方「観音様」を心の支えとし、これからも変わらぬ信仰の道を歩み続けたいと思います。

 観は心(の目)でみる意味に解釈いたします。どうぞ広く大きな心で世の中を見渡して、毎日を大切にお過ごしくださいますようお願いいたします。

知明拝

平成十七年 行事ご案内  毎月十七日の法要はすべて午後一時からです

 1月1日(土) 修 正 会(元日護摩供・ご祈祷)
 1月17日(月) 月例法要 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌
 2月3日(木) 節分祭 星祭 午後二時より豆撒き
 2月17日(木) 月例法要
 3月17日(木) 月例法要 春彼岸 大施餓鬼会
 4月8日(金) 釈迦降誕会=花まつり 花まつりコンサート(予定)
 4月17日(日) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌
 4月29日(金・みどりの日) 慈音会法要・多宝塔供養祭
 5月17日(火) 月例法要
 6月17日(金) 月例法要
 7月17日(日) 月例法要 盂蘭盆 大施餓鬼会
 7月31日(日) 百観音献灯会(予定) 夕方六時より
 8月17日(水) 月例法要
 9月17日(土) 月例法要 秋彼岸 大施餓鬼会
 10月17日(月) 月例法要
 11月17日(木) 月例法要 大祭・大護摩供 ならびに境内石仏総供養
 12月17日(土) 月例法要(納めの百観音法要)

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   毎月第一日曜日午前九時より 写経の会(小筆を一本ご持参ください)
                 但し 一月は九日(第二日曜日)に変更いたします