ひとくち伝言 平成18年7月
「鳥を自由にしてやると、幸運が訪れるんですよ。」というセリフから始まる、VISAカードのテレビコマーシャルをご存じでしょうか。
舞台はインドの町。ハリウッドの映画俳優、リチャード・ギアが、インド人のガイドから話を聞いています。そこに、少女が走ってきて鳥売りの店に駆け込み、「鳥を五羽ください。兄さんのためなの。」とお金を出すのですが、少女が持っていたお金では一羽しか買えませんでした。少女はトボトボと帰っていきます。それを見ていたリチャード・ギア。VISAカードで鳥を買い占め、少女のために空に放す、といった筋書きです。
タイに行かれた事がある方はご存じかと思いますが、この、鳥を空へ放すという風習はタイの寺院近くでもよく見られます。この風習は、実は仏教の不殺生の教えから生まれたものなのです。
慈悲の心によって、捕らわれた生き物を助け、生かす布施行を「放生」と言います。その善行の功徳を、CMでは分かりやすく「幸運」という言葉に置き換えているのでしょう。お施餓鬼も、餓鬼へ施しをした功徳をご先祖様に手向ける(回向する)行事ですから、意味合いは一緒ですね。
実は、日本でもこの放生は古くから行われており、平安時代や鎌倉時代にはすでに放生会という行事が行われていたそうです。江戸時代には 放し鰻、放し鳥、放し亀などが行われ、一般庶民の風習として定着しました。放生会はお盆の時期に行われていた事から、これらの言葉は夏の季語にもなっています。かの小林一茶も、「放し亀 蚤も序に とばす也」という俳句を詠んでいます。
この放生ですが、気を付けなければいけないことがあります。それは、単に「生き物を放す」ことが放生の目的なのではなく、「生き物を放し、生かす」ことが目的だということです。
現代は大変複雑な環境になっていますから、江戸時代のように動物を放せば、それだけで生かせるというわけには行きません。無責任に動物やペットを放す事は、放生どころか殺生にもなりかねませんし、仮に放した動物が生き残れても、その動物が元々その環境にいた他の動物の命を脅かす事もあります。 他の命を生かすとはどういうことなのか。他の命と共に生きるとはどういうことなのか。とても難しい問題を突きつけられているような気がいたします。
現代の日本でも、放生会を行っている神社仏閣は数多くありますが、環境に配慮し、生かすことを目的としています。、
また、献灯会のお灯明は、ユニセフを通じて、救いを求める人々の未来を照らす事ともなります。これも「他の命を生かす」こと、つまり、CM風に言えば「幸運が訪れる」功徳になるかと存じます。
なお、リチャード・ギアは、ダライ・ラマ一四世に深く帰依した敬虔な仏教徒ですので、布施と回向の意味は充分に理解していることでしょう。あまりに格好良い役柄なので、少し妬いてしまいますが…(笑)
(榮雅)
ひとくち伝言板
◇7月〜9月の行事予定
7月2日 (日) 午前9時より 写経の会
7月8日(土)〜 15日(土) お盆棚経期間
7月17日(月) 午後1時より 盂蘭盆大施餓鬼会(塔婆供養)
お塔婆は前もってお電話かFAX、eメールにてお申し込みください。
1本3,000円です。
7月30日(日) 午後6時より 献灯会
8月17日(木) 午後1時より 月例法要
9月3日 (日) 午前9時より 写経の会
9月17日(日) 午後1時より 秋彼岸大施餓鬼会(塔婆供養)
◇お盆の棚経をご希望される方は、お早めにご連絡いただけると有り難く存じます。ご自宅へお伺いし、ご先祖様方のためにお経を上げさせて頂きます。
◇7月30日(日)午後6時より
恒例 百観音献灯会(ひゃっかんのんけんとうえ)
・境内の石仏にお灯明をたくさんあげて供養し、飢えた子どもの救いを祈る行事・
年々賑やかになっていく感のある献灯会ですが、毎年不思議に思う事があります。あれだけ大勢の人が足を運んでくださって、とても賑やかなのにもかかわらず、どことなく静かで落ち着いた雰囲気があるような気がしませんか。「確かにそんな気がする」とお思いになった方は、またその雰囲気を味わいに、「そうかなぁ?」、「そういう雰囲気なのか」とお思いになった方はそれを確かめに、是非足をお運びいただきたく存じます。
詳しくは、同封のチラシをご覧くださいませ。