ひとくち伝言 平成21年7月

 本当かどうかは分かりませんが、日本が開国した頃、ある欧米の商人が「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を知って驚愕したそうです。「なんてこった、これは複雑な経済の仕組みを一言で表せる名言だ!」と。

 まず、風が吹くと埃で目を悪くする人が増え、そうすると三味線を弾こうという人が増える(当時、目が不自由な人の多くは三味線を弾いて生計を立てていたそうです)。この三味線は猫の皮で作っていたので猫が減り、鼠がのさばるようになってしまう。鼠が桶を囓るので桶が売れ、桶屋が儲かるのだ、という流れが一般的でしょうか。関連性の連鎖によって、思わぬところに思わぬ影響が出るものだという諺ですが、改めて順を追って考えていくと、かなり無茶苦茶な話であります。落語などでは、この無茶苦茶さ、こじつけっぷりが笑いどころなわけですが…。そう、この諺、元は笑い話なんです。一方では複雑な因縁と結果の連鎖を端的に表す名言、一方では無茶苦茶な理論を展開する笑い話。この差は一体…?
 実はこの諺は「結果から原因を考える」のか、それとも「原因から結果を考える」のかで、意味が大分変わってくるのです。

 現実に起きたことの原因や要因をそれぞれに考えていくと、一見すると無関係な事が非常に重要な要素となっていた、というのはよくあることのように思えます。例えば、現在の世界金融危機や日本の不況の切っ掛けは?と考えていくと、米国のサブプライム問題や中東問題に端を発する原油高なんてことが言われています。そこからさらに、それらが起きた背景を際限無く考えていくと、それこそ思いもよらない因縁も見つかるのかも知れない。が、原因から起こる因果の連鎖を考えるとなると、一つや二つくらいはなんとか予想できたとしても、五つ六つと連鎖した先はもう笑い話にしかならないわけです。だって、例えば風が吹いた時、そこに埃があるという縁や、井戸が無いのですぐに目を洗えないといった条件全てを予測するなんてことはとても無理でしょう。特に最初の方の連鎖では、ちょっとしたことで全てが違ってきてしまうわけです。そこをあえて決めつけて説明してしまうあたりに、この話の面白さがある。世の中の複雑さを端的に表現しつつも、それを予測することの無茶苦茶さを「馬鹿なこと言ってらぁ」と茶化し、さらには、そんな冗談みたいなことがたまに、現実に起こってしまうこの世の中のあやふやさ、いい加減さを面白がっているようにも思えます。

 ちょっと先の、その先がどうなるかなんて実は誰にも分からないわけで、最悪に思える出来事が、後から考えてみると良い結果を招いていた、なんてこともよくある話です。こんな事が起きたから、次はこうなる筈だ!なんていう風に、なんでもかんでも決めつけて考えすぎてしまうのも、考えものかも知れないなぁ。そんなことを、風で転がったお参り用の水桶を拾いながら思いました。
                                                  (榮雅)



ひとくち伝言板

◇7月〜9月の行事予定

7月5日 (日) 午前9時より  写経の会
7月10日頃〜15日頃    お盆棚経期間
7月17日 (金) 午後1時より  盂蘭盆大施餓鬼会(塔婆供養)
                   お塔婆は前もってお電話かFAX、eメールにて
                    お申し込みください。1本3,000円です。

                    並びに榮應和上七回忌御供養

7月26日 (日) 午後6時より  献灯会

8月17日 (月) 午後1時より  月例法要

9月6日 (日) 午前9時より  写経の会
9月17日 (木) 午後1時より  秋彼岸大施餓鬼会(塔婆供養)


◇お盆の棚経は、ご自宅へお伺いし、ご先祖様方のためにお経を上げさせて頂く法事でございます。ご希望される方は、日程の調整をいたしますので、お早めにご連絡いただけると有り難く存じます。
また、お寺へお参りいただいてお盆のご供養をなさる方もいらっしゃいます。御気軽にご相談ください。

◇7月26日(日)午後6時より
   百観音献灯会(ひゃっかんのんけんとうえ)
        詳しくはこちらをご覧くださいませ

◇今年は明治寺第三世 榮應和上の七回忌にあたります。7月17日の大施餓鬼会法要にて、併せてご供養を申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。