ひとくち伝言 平成24年5月
もしかすると本当に兎を見つけられるんじゃないかってくらい、くっきりと闇夜に浮かぶ見事な月を眺めながら、清々しい気分で今この文章を書き始めております。いつもより月が堂々としているようでありまして、気分によって随分見え方も違うものだと風流ぶっておりましたら、どうも月の周回軌道の関係で、本当にいつもより大きいのだとか…。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、この五月の五日と六日の月は、楕円軌道の月が地球に一番近づいた時にちょうど満月となる「スーパームーン」なんだそうで、いつもの月より14%大きく30%明るいそうです。形だけでなく大きさや明るさまで変えるとは。全く、変幻自在の月であります。
シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」では、ロミオがジュリエットへの愛を「あの美しい月にかけて」誓おうとし、ジュリエットに「ひと月ごとに形を変える、不実な月に誓ってはいけません」と言われてしまいます。不実だなんて、月もひどい言われ様。ところが仏教では、このひと月ごとに形を変える月を、私たち自身の心に喩えてしまいます。
密教の阿字観(あじかん)という瞑想法に月輪観(がちりんかん)という観法があります。黒地に白い満月の円(月輪)が描かれた掛け軸に向き合い、その月輪を、自分の中にある「仏さまの心」と観る瞑想です。「仏さまの心」は三日月や半月のようにいろんな段階がありますが、それをじっと坐禅を組んで瞑想し、満月のように円満で明るく、清々しい状態に近づけていくのです。この時に忘れてはならない大事なことは、「仏さまの心」である心の月が、たとえどんなに細い三日月のようであろうと、あるいは新月の闇夜のようであろうと、それはお日さまの光が当たらず影になっているだけなのだということ。欠けているように見えても、それは今の自分の場所からはそう見えるだけで、本当はしっかりとそこに存在しているんです。そして、心配しなくとも、ちゃんと光が当たれば満月になる。誰もがそういう満月を自分の中に持っている。お日さまから見れば、月はいつだって満月です。ちなみに、その心の月にとってのお日さまを、真言宗では大日如来(だいにちにょらい)と呼びます。
私たちは、なかなか仏さまの視点で物事を見たり心を照らしたりは出来ませんから、自分の心も人の心も、満ちて見えたり欠けて見えたりいたします。でもそれは、光が当たっている心の一部しか見えていないだけ。今は見えないだけの満月を忘れちゃいけません。
だいぶ月も高くなって参りました。月に釣られて、私の心も今夜は満月であります。
(榮雅)
平成24年 5月〜7月の行事予定
5月17日 (木) 午後1時より 月例法要
6月3日 (日) 午前9時より 写経の会
6月17日 (日) 午後1時より 月例法要
7月1日 (日) 午前9時より 写経の会
◇花まつりコンサートご報告
一昨年から、4月8日直前の日曜日に日程を変更して開催しております花まつりコンサートですが、今年はちょうど8日が日曜日でございました。お釈迦様の誕生日である4月8日の花まつりに、ちょうど合わせたかのような満開の桜。本当に大勢のお客様にお越しいただきまして、素晴らしいコンサートとなりました。御協賛も大勢の方からお寄せいただきまして、今年は40万円を寄付できることとなりました。地震と津波の被害があった地域の子どもたち、カンボジアの子どもたちが笑顔になることを祈りつつ、ご報告させていただきます。なお、収益の端数分は、来年コンサートの準備金とさせていただきました。
◇百年祭記念会館落慶式について
会館の建設も着々と進んでおります。現在は基礎工事が済み、次は一階部分の枠を作りコンクリートを流し込む段階でしょうか。秋に完成の予定ですので、暫定ながら落慶法会は百年祭からちょうど一年の11月17日(土)を考えております。詳細が決まりましたら改めてご案内をさせていただきます。