ひとくち伝言 平成24年9月
「山火事を消そうとしたオウムのようになりたい。」
私の父、榮應が二十年ほど前に「将来計画」と題して書いた覚え書きの中に、こんな一言がございました。一瞬、あのカルト集団のことが頭をよぎりますが、違います。ジャータカ(本生譚[ほんしょうたん])という、お釈迦様の前世の物語に登場する、鳥のオウムのことでございます。
多くの動物たちが暮らす平和な山で、ある日、山火事が起こりました。木々が乾燥し、自然発火したのでしょうか。火は瞬く間に山全体に広がりました。動物たちは逃げ場を失い、もはや火に巻かれるのを待つばかりです。その時、あるオウムが一羽、山を飛び立ちました。遠く離れた泉まで飛んでその羽を水に濡らし、山の上空で羽ばたいては水を数滴、火に振りかけます。何度も何度も山と泉を往復して、水を振りかけました。火の勢いは益々強くなりますが、それでも諦めることなく水を運び続け、やがて、オウムは火の中で力尽きました。それを見た帝釈天[たいしゃくてん]は、オウムの意志と行動に感じ入り、雨を降らせて山火事を鎮火させました。途方もないことを不可能と断じて諦めるのではなく、身を惜しまず尽くせばその意志はやがて天をも動かす。そんな寓話です。
このオウムのように、一人の僧として人々のためにこの命を使いたい。そんな想いがあったのでしょうか。父は古代インドの四住期[しじゅうき]という思想を引き合いに出して、こっそりと構想(妄想?)を練っていたのであります。四住期というのは人生を「梵住期[ぼんじゅうき](学びの時期)」「家住期[かじゅうき](家を支える時期)」「林棲期[りんせいき](森や林で修行する時期)」「遊行期[ゆぎょうき](一処に留まらず諸方を巡る時期)」の四つの時期に分ける人生設計のこと。本堂や納骨堂を建立して寺の基盤を整える時期を「家住期」とし、それがある程度成ったならば寺を息子に預けて本来の出家をしたい。林棲期、そして遊行期に入り、ユニセフの現場やバグダッド(当時は湾岸戦争中)に行って、人々のために働きたい。山火事を消そうとしたオウムのように。覚え書きには、そうありました。
父のこの文章は、百年祭記念誌の編纂のために過去の原稿を整理していた中でたまたま見つかったのですが、寺を私に預けようと考えていた時期が、私が三十才を少し過ぎた頃、つまりちょうど今頃でございました。この「山火事を消そうとしたオウム」の話も、今まさに私に必要な訓示だったこともありまして、そのタイミングの良さに不思議な縁を感じます。目には見えないけれど、風に乗ってあちらこちらを遊行しているのでしょうか。意外と構想通りだったりして。秋風を肌に感じながら、ふとそんなことを考えております。
(榮雅)
平成24年 9月〜11月の行事予定
9月2日 (日) 午前9時より 写経の会
9月17日 (月) 午後1時より 秋彼岸大施餓鬼会(塔婆供養)
お塔婆は前もってお電話かFAX、eメールにて
お申し込みください。1本3,000円です。
9月22日 (土) 午前8時より
午後5時 最終回 百年祭写経
10月7日 (日) 午前9時より 写経の会
10月17日(水) 午後1時より 月例法会
11月4日 (日) 午前9時より 写経の会
11月17日(土) 午後1時より 百年祭記念会館落慶
並びに木造聖観音立像開眼法会
◇今年の献灯会もお陰様で大変盛況でございました。収益のうち15万円を日本ユニセフ協会へ、募金と合わせた172,851円を東日本大震災で被災した地域で子どもたちのために青空保育活動を行っているNPO法人、CYRへ寄付させていただきました。ここにご報告をいたしますと共に、ご協力いただきました皆様に感謝申し上げます。
◇今年の夏、関東は非常に雨が少なく、今後の水不足が心配されますが、記念会館工事の方は大変はかどっております。百年祭記念会館落慶並びに木造聖観音立像開眼法会の日時を11月17日(土)午後1時と決定いたしました。御協賛をいただきました皆様には改めてご案内申しあげます。
また、聖観音立像胎内納経の締め切りも近づいて参りました。開眼の一ヶ月前には枚数を把握したいと存じます。納経をご希望の方で、まだお写経をお届けいただいていない方はお急ぎいただければ有り難く存じます。なお、秋分の日の9月22日(土)は百年祭記念納経のための最後の広間開放となります。午前8時から午後5時のお好きな時間で、どうぞお気軽にご利用くださいませ。