ひとくち伝言 平成25年9月
クワズイモという、少し変わった名前の植物があります。どんな芋かというと、食べられない芋です。なんて分かりやすい名前だろう。しかし、見た目は里芋そっくりで紛らわしい。なぜこの芋が食べられないかというと、それにはなんとお大師様が関係しているのだそうです。
お大師様が修行の旅の途中、腹ぺこでようやく村に行き着いた。ちょうどその道端で里芋を焼いていた村人に、芋を分けてくれと頼んだが、村人は「これは毒芋だ」と断った。すると、その芋は本当に毒芋になり、食べられなくなってしまったそうな。…まるでお大師様が、断られた腹癒せに、法力(ほうりき)で毒芋に変えてしまったかのようです。なんて心が狭いんだ。
しかし、数々の奇跡を残すお大師様も、そんな意味のないことはしないはず。昔の人はきっと、里芋そっくりなのに食べられない理不尽さを、お大師様の所業なら仕方がないと諦め、納得しようとしたんじゃなかろうか。あるいは、里芋と間違えて毒芋を食べようとした人を見かけ、「その芋は食ったらいかん!」と、厳しく注意なさったのかも知れない。なにしろ、この話が伝わる地域によっては「芋を断った村人に、お大師様が怒った」とはっきり残っているほどです。たとえ狭量な法力僧として伝説に残されるとしても、人々を救うためには強く戒めなければならなかったのでしょう。
ある知り合いのお坊さんが、こんな話をしてくれました。普段、あまり寺に顔を出さない檀家さんが、急に寺にやってきた。なにか話があるのかと思いきや、唐突に息子の自慢話を始めたそうです。
「俺の息子は出来が良くてよ。○○大学出て、○○に就職してな。エリートだよ。なあ、偉えもんだろ。なあ、すげえだろ。」と、うんざりするほど息子を誇り、結局その日は自慢話だけして帰って行ったんだとか…。
ほどなくして、その方は病気でお亡くなりになった。通夜の後、息子さんに「お父様は、あなたのことが本当に自慢だったんですね。」と声をかけると、息子さんは怪訝な顔。そこで、先日の寺での話をしたところ、それまで冷静だった息子さんが急にボロボロと泣き崩れたそうです。
「親父は昔から厳しくて、絶対に甘やかしてくれなかった。叱られてばっかりでした。大学の時も就職の時も、浮かれるんじゃねえぞ、としか言ってくれなくて…。まぁ、お陰で頑張れたんですけど。まさか、そんな風に思ってくれていたなんて…。」
あの自慢話は、照れ臭くって直接言えなかった、親父さんからの伝言だったのでしょうか。息子さんのために、あえて厳しく接していたのかも知れません。そして、最期にそれを伝えたかったのかな。おまえは俺の自慢の息子なんだぞ、おまえが俺の一番の誇りなんだぞ、と。
ちなみに、クワズイモの毒は、使い方次第で胃腸の薬になるそうです。思いやりある適切な厳しさは身体を活かし、そして人を活かすのでありましょう。
(榮雅)
平成25年 9月〜11月行事ご案内
9月1日 (日) 午前9時より 写経の会
9月17日 (火) 午後1時より 秋彼岸大施餓鬼会
お塔婆は前もってお電話かFAX、eメール、
お問い合わせフォームよりお申し込みください。
1本3,000円です。
9月26日 (木) 午後3時より 法話と能の話を聞く集い
10月6日 (日) 午前9時より 写経の会
10月7日 (月) 午前9時より 写経の会
10月17日(木) 午後1時より 月例法要
10月28日(月) 第1回 板東三十三観音参拝 日帰り旅行
10月31日(木) 午後3時より 法話と能の話を聞く集い
11月3日 (日) 午前9時より 写経の会
11月4日 (月) 午前9時より 写経の会
11月17日(日) 午後1時より 月例法要 並びに 百観音総供養
11月28日(木) 午後3時より 法話と能の話を聞く集い
◇今年の献灯会は雨もすぐに止み、全部で1115灯ものお灯明が献じられました。収益は393,455円となりましたので、端数分を寺から支出し、20万円を日本ユニセフ協会へ、20万円を東日本大震災で被災した地域で子どもたちのために活動を行っているNPO法人 CYRへ寄付させていただきました。ここにご報告申し上げます。ありがとうございました。