ひとくち伝言 平成26年1月
吾唯知足 (われただたるをしる)
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。新しき年には、一年の無事と健康を祈り、長寿を願うもの。それに因み、こんなお話をご紹介したく存じます。
とあるご長寿のご婦人が、ご病気のために耳が聞こえなくなったお友達について、こんなことを仰っていたそうです。「私は音楽やラジオを聞いたり、こうやって家族と会話を楽しめるけれども、あの方はそれが出来なくてお気の毒ねぇ。」一方、そのお友達のご婦人は、「私は本を読んだり絵を見に行ったり、みんなとトランプをしたりして楽しめるけれど、あの方は目が見えないから楽しみが無くて、お辛いわね。」とご家族に仰っていたとか。そう、実は最初のご婦人も、ご病気のために、目がお見えにならないのでありました。なんだか落語の一幕のようでございますが、どちらのご婦人も、自分はあの人よりはマシだなんて狭量な考えではなく、心から相手を思いやってのお言葉だったそうです。目が見え、耳も聞こえる身からすれば、どちらもそれぞれに大変なことなのでありますが、このお二方にとっては「自分に出来ないこと」よりも、「自分が出来る楽しいこと」の方が大きな関心事のよう。素敵なお二人でございます。
石庭で有名な、京都の龍安寺(りょうあんじ)にある蹲踞(つくばい)(手を浄めるための石鉢)には、水が溜まる四角い窪みの周りに五、隹、止、矢が刻まれ、中央の口と組み合わさって「吾、唯足ることを知る」という言葉が表されております。この「知足」は、老子の書の中に「知足者富(足るを知る者は富む)」「知足不辱(分をわきまえて欲をかかなければ、屈辱を受けない)」と説かれ、孔子を始め多くの思想家に引き継がれておりますが、お釈迦様もまた、最期のお言葉である遺教経(ゆいきょうぎよう)(仏垂般涅槃略説教誡経(ぶっしはつねはんりゃくせつきょうかいきょう)の中で、この「知足」を説いていらっしゃいます。
「知足の法は則ちこれ、富楽安穏の方法である。足るを知る人は、地上に臥せていても、なお安楽であり、足るを知らない者は、天の宮殿にいても、まだ意に適わないのである。足るを知らない者は、富んでいても貧しく、足るを知る人は、貧しくとも富むのである。」
足りないものばかりに目を向けていては、常に自分の身の周りにわざわざ不満ばかりを置いて暮らすようなもの。自然と世界は悲観的なものに写りましょう。果てのない欲求や不満に埋もれ、その手の宝物まで見失ってしまうかも知れません。それでは実に勿体ない。まずは、自分が持っているものの本当の価値に気付くこと。これが、富と楽に繋がるのですね。
冒頭の二人のご婦人は、医学的には確かに能力が衰えているはずなのですが、それは決して不足ということにはならず、日々の生活はとても豊かそうであります。出来ないことを儚むのではなく、出来ることを存分に楽しみなさい。それが長寿の秘訣なのよと、お二方には教えられたような気がいたします。
(榮雅)
平成26年 行事ご案内
毎月17日の法要はすべて午後1時からです (どなたでも御参加いただけます)
1月1日(水) 修 正 会(しゅしょうえ)(元旦護摩供養・祈祷)
1月17日(金) 初観音大護摩供 ならびに開基榮照法尼祥月忌
2月3日(月) 節分会 星祭 午後二時より法要 豆撒き
2月17日(月) 月例法要
3月17日(月) 春彼岸 大施餓鬼会
4月6日(日) 花まつりコンサート
4月8日(火) 釈迦降誕会((ごうたんえ)(花まつり)
4月17日(木) 月例法要 ならびに開山密信和上祥月忌
4月29日(火・昭和の日) 慈音会法要・多宝塔供養祭
5月17日(土) 月例法要(護摩供養)
6月17日(火) 月例法要
7月17日(木) 盂蘭盆 大施餓鬼会
7月27日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
8月17日(日) 月例法要
9月17日(水) 秋彼岸 大施餓鬼会
10月17日(金) 月例法要
11月17日(月) 境内石仏総供養大護摩供
12月17日(水) 月例法要(納めの百観音法要)
※毎月第1日曜日ならびに翌日の月曜
午前9時より 写経の会 (小筆と納経料をご用意ください)
但し、2月は第2週の9日と10日に変更いたします。
※坂東三十三観音巡礼の第2回目は4月2日(水曜日)、
小田原方面への参拝を予定しております。