ひとくち伝言 平成27年3月

 去年の暮れのこと。庭掃除をしておりましたら、近所の子どもが元気に挨拶をしてくれました。
「こんにちはー!ボウズー!」
……行儀が良いんだか悪いんだか。まぁでも、親しみを持ってくれているのでしょう。多分。有り難いことです。坊主の坊は僧侶の居場所、つまり寺を意味しますから、坊の主で間違いではないですしね。坊主をさらに省略すると、「坊」さんという呼び方になります。

 御殿におわすお殿様、奥にいらっしゃる奥様というように、居場所で人を表したり、身分や屋号でお呼びして、お名前を呼ぶのを避けるという風習があります。名前は魂と結びついているので、知られると呪われたり支配されてしまうという考え方は世界中にありますが、特に漢字の文化圏では徹底しておりまして、実名を隠したり通称を使ったりすることもしばしば。日本でも「君の名は?」と、秘められた名前を聞くことが求婚を意味した時代がありました。名前を知ると強い影響力を持てるだなんて、ずいぶんと魔術めいた話にも思えますが、実はあながち迷信とも言い切れないのです。
 「おい」とか「ちょっと」というような、誰のことを呼んでいるのか、あやふやな呼び方はあまり大事にされている感じがしませんが、名前で呼ばれると、他の人とは違う特別な存在として自分を認めてもらえたような感じがして、悪い気はしないもの。化粧品会社の大手、ポーラの調査によれば、名前を呼ばれる、ただそれだけのことで、愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンが分泌され、ストレスが減ったり穏やかな気分になれるのだそうです。自分の名前は、ガヤガヤと賑やかな場でもすっと耳に入ってきて意識を惹きつけてしまう、特別な、魔法のような音。敬意や感謝を込めて相手の名前を呼べば、きっと良い関係を築けることでしょう。

 インドの古い原語、サンスクリット語で敬意や感謝という言葉を「ナマス」と言います。文型によって形が変わるとナモー、あるいはナーマク。日本では「南無(なむ)」と言ったりナウマクと言ったりしますね。つまり、「南無観世音菩薩(なむかんぜおんぼさつ)」や「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」、そして「ナウウマクサンマンダ〜」と真言をお唱えするのは、尊敬の意味を込めて仏さまのお名前をお呼びしているわけです。仏さまも、ご自身のお名前が大事に呼ばれると、ついつい手助けたくなってしまうのかもしれません。
 どうぞ、仏さまのお名前やご先祖様のお名前とお戒名、そして親しい皆さまのお名前を、敬意と感謝を込めて呼んでみてください。それは絆を紡ぎ、親愛を深める魔法の言葉、真言となるはずでございます。

草野榮雅 拝

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平成27年 3月〜5月の行事予定 

 3月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
 3月17日 (火) 午後1時 春彼岸大施餓鬼会
               お塔婆のお申し込みは前もってお電話かFAX、
               Eメールにてお願いいたします。1本三千円です。

 4月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 4月5日 (日) 午後6時 花まつりコンサート
 4月11日 (土) 午前9時 坐禅の会
 4月13日 (月) 第5回 坂東三十三観音参拝 日帰り旅行
 4月17日 (金) 午後1時 観音経読誦会(月例法要)
 4月29日 (水) 午後2時 慈音会総供養

 5月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 5月9日 (土) 午前9時 坐禅の会
 5月11日〜12日(13日)高野山開創千二百年記念法要 参拝旅行
 5月17日 (日) 午後1時 観音経読誦会 並びに護摩供養

◇春分の日前後の一週間、昼夜の長さが丁度同じくらいになる期間をお彼岸と申します。
ご先祖様を尊びお塔婆を建立してお戒名を読み上げます。ご希望の方は、事前にお申し込みくださいませ。

◇今年は花まつりコンサートを4月5日に行います。今回は、日本で不要になった布を切ってカンボジアに送り、子どもたちに遊具を贈るボランティア、布チョッキンを行います。気軽にできる人助けに、どうぞ御参加ください。
 チケットの他に、楽器運搬の費用をご支援いただけますと有り難く存じます。一口一万円ですが、何卒よろしくお願いいたします。