ひとくち伝言 平成27年9月
古来お寺にはお香がつきものでございまして、事あるごとにお焼香したり線香をお供えいたします。時には身体に塗ったり、口に含んだり。なぜ仏教ではお香がそんなに重要なのかと言えば、仏教中興の祖、龍樹の大智度論という経典に曰く「天竺(インド)は暑いので、身体が臭くなるから」。なんとも得心が行く理由であります。もちろん、身体を清め、空間を清めることが心を清めることに繋がるのですけれど。
さて、そんなお香にもたくさんの種類がありまして、いい香りのお香もあれば、中には少々煙たいお香も……。人それぞれ好みもありましょうし、抹香くさいという言葉もあるくらいですから、苦手な方も少なからずいらっしゃることでしょう。
先日、父の十三回忌のご供養にはとっておきのお香、「伽羅(きゃら)」をお焼香に用いました。かつては同じ重さの黄金で取引されていたお香で、現代ではワシントン条約により取引が制限されているために、さらに稀少となっているそうです。良いものはなんと、1グラムあたり5万円を超えるとか。そんなにも貴重なお香は、果たしてどれほど良い香りがするのだろうかと、ご供養の前に少し本堂で焚いてみました。心躍らせながらスッと香煙を吸い込みますと……フゴッ。煙たいだけであまり香りがしません。稀少だから高価なだけなのか、あるいは偽物なのか。とんだ期待はずれです。がっかりしながら本堂を離れたのでありました。
ところがしばらくして、香炉の後始末をしようと本堂に戻ってまいりますと、なんとお堂全体が芳香に包まれているではありませんか。焚いてすぐは煙たいだけのお香が、時間が経ち、場の空気と混ざり合うことで馥郁とした味わい深い香りとなっていたのでした。
そういえば、父も同じ経験をこの「ひとくち伝言」に書いておりました。期待して伽羅を焚いて、やっぱりがっかりして、後で香りに気が付いて。そして「お釈迦様の教えは時に説教くさくて煙たいけれど、時とともに経験や知識と混ざりあい、味わい深くなるものだ」と結んでありました。なるほどなぁ。その父にも、だいぶ煙たい事を言われたものですが。
最初から芳しい香りもあれば、後から薫る香りもある。煙たさの向こうにある味わいをじっと待ってみるのも、なかなか良いものです。
草野榮雅 拝
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平成27年 9月〜11月の行事予定
9月6日・7日 (日・月) 午前9時 写経の会
9月12日 (土) 午前9時 坐禅の会
9月17日 (木) 午後1時 秋彼岸大施餓鬼会
お塔婆は前もってお電話かFAX、Eメールでお申し込みください。
一本三千円です。
10月4日・5日 (日・月) 午前9時 写経の会
10月10日 (土) 午前9時 坐禅の会
10月17日 (土) 午後1時 観音経読誦会
11月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
(11月5日 (木) 第七回 坂東三十三観音 参拝旅行 )
11月14日 (土) 午前9時 坐禅の会
11月17日 (火) 午後1時 百観音総供養
◇ 春と秋の二度、昼と夜の長さが同じになる時期をお彼岸と申します。仏教の説く中道、すなわち偏りの無い最良の道を選べるよう、ほとけ様、ご先祖様にお念じくださいませ。
秋彼岸大施餓鬼会塔婆供養をご希望の方は、事前にお申し込み願います。
◇ 毎年七月最終日曜日に開催の献灯会。今年はお天気にも恵まれ、ようやくインドネシアの影絵芝居、「ワヤン」を屋外で上演できました。
収益金より15万円を日本ユニセフ協会に、15万円を日本赤十字社の東日本大震災義援金に寄付させていただきました。
◇ 来年、平成28年1月より、毎月17日の月例法要(観音経読誦会)の時間を午後2時〜に変更いたします。どうぞよろしくお願いいたします。