ひとくち伝言 平成29年1月
得生人道難 生寿亦難得 世間有仏難 仏法難得聞
平 成 二 十 九 丁 酉 年 正 月
新たな年をお迎えできることを感謝すると共に、日頃よりの皆様のご厚誼を心より有り難く存じております。
ふと、この「有り難い」という言葉を広辞苑で引いてみますと、「有ることが難しい」「滅多にない」といった意味が一番目に書いてあります。感謝という意味はなんと五番目。おや、これは少し使い方が難しい言葉なのかも知れません。例えば友人が親切にしてくれた時などに「有り難う」と伝えると、「あなたが親切にしてくれるなんて、滅多にないことだ」なんて意味にならないだろうか。考えてみると、不思議な言葉です。
中国語では「有り難う」は「謝謝(シェシェ)」。言葉を射ると書く謝の語源は、弓矢の矢が放たれると弦の張りが緩むように、言葉を放つことで気持ちの高まりや心の緊張が緩むことを表しているそうです。日本語での感謝、そして謝意も、言葉にせずにはいられない感情なのでしょう。
英語の「サンキュー」は、think(思考する)と同じ語源だそうで、相手を思いやることが感謝だということでしょうか。ドイツ語の「ダンケシェーン」も同様です。イタリア語の「グラッツェ」、スペイン語の「グラシアス」の語源は共に「好意」、フランス語の「メルシィ」は「慈悲」とか「報酬」、ポルトガル語の「オブリガード」は「義務」。ロシア語の「スパシーヴァ」は「神さま助けて」だそうで、「神のご加護を」というニュアンスでしょうか。アラビア語にも神の祝福を祈る言い回しがあります。そして、仏教と縁深いインドではどう言うかというと……、「サンキュー」。なんと英語です。インドでは感謝を行動で示すので、感謝の言葉は元々無いのだとか。言葉のルーツを追うと、それぞれの文化、思想が見えてきます。それでは、日本語の「有り難う」のルーツは何でしょうか。実は「有り難い」という言葉は、法句経というお経の文句が語源だと言われています。
「人の生を受くるは難く、やがて死すべき者のいま生命あるは有り難し」
当たり前に食べ物を口にし、当たり前に呼吸をし、当たり前に生きていることが実はどれだけ奇跡的で有り難いことか。家族や友人がいてくれること、笑い合えるということ、ご縁をいただいたこと。「有り難う」という言葉には、一見すると当たり前に見えること全てが、本当は有り難いこと、素晴らしいことなのだと、「今」を積極的に肯定し、隠れた幸せをどんどん発掘していく力があるような気がいたします。
カリフォルニア大学の心理学教授、リュボミアスキー博士の研究によれば、自分が幸せになるために第一にすべきことは「感謝の気持ちを表すこと」。幸多き一年のためにも、「有り難う」を心がけてみるのはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、有り難うございました。
草野榮雅 拝
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平成二十九年 行事ご案内
一月一日(日) 修 正 会(元旦護摩供養・祈祷)
一日〜三日 午後二時より護摩祈祷
一月十七日(火) 初観音大護摩供
二月三日(金) 節分会 星まつり
午後二時より法要、豆撒き
二月十七日(金) 観音経読誦会(月例法要)
三月十七日(金) 春彼岸 大施餓鬼会
四月二日(日) 花まつりコンサート
四月八日(土) 釈迦降誕会(花まつり)
四月十七日(月) 観音経読誦会
四月二十九日(土・昭和の日)
慈音会法要・多宝塔供養会
五月十七日(水) 観音経読誦会(護摩供養)
六月十七日(土) 観音経読誦会
七月十七日(月・海の日) 盂蘭盆 大施餓鬼会
七月三十日(日) 百観音献灯会 夕方六時より
八月十七日(木) 観音経読誦会
九月十七日(日) 秋彼岸 大施餓鬼会
十月十七日(火) 観音経読誦会
十一月十七日(金) 境内石仏総供養大護摩供
十二月十七日(日) 観音経読誦会
(納めの百観音法要)
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●毎月十七日 観音経読誦会(月例法要)
毎月午後二時より、僧侶方の声明(節の付いたお経)の後、太鼓の音に合わせて妙法蓮華経観音経と般若心経をご一緒にお唱えいたします。法話の後は茶話会をお楽しみください。
どなたでもご参加いただけます。
正月、五月、十一月は護摩法要、三月、七月、九月は施餓鬼法要を併せて修行いたします。
●毎月第一日曜日ならびにその翌日の月曜日
午前九時より 写経の会 (小筆と納経料千円をご用意ください)
※ただし、一月は第二日曜日の八日と九日、八月はお休みです。
●毎月第二金曜日 午後一時より習字の会
参加ご希望の方はどうぞお問い合わせください。
●毎月第二土曜日の午前九時より坐禅の会
呼吸法を中心とした気楽な坐禅です。ゆったりした服装でお越しください。参加料 五百円。八月はお休みです。