ひとくち伝言 令和3年9月
今年の献灯会はワクチン接種者の増加を見込んで時期をずらしたのですが、感染増加と緊急事態宣言発出により、とても例年通りには行えない状況となってしまいました。しかし、ただお灯明をお供えするだけであっても中止にするよりはマシと考え、静かに法要を行った次第です。自粛をしてくださった方々、遠方よりお力添えをくださった方々に心から感謝を申し上げます。
ところで、「マシ」って面白い言葉ですね。後ろ向きなのか前向きなのか、よく分からない言葉です。例えばテストの点数が五十点だったとして、百点満点からは減点ですが、0点よりはマシ。最悪から考えれば、点数が「増し」なんです。実際、「マシ」という言葉の語源は「増す」だそうで、マイナスなことをプラスとして捉える面白い言い回しです。
鴨長明の発心集に「ましての翁」という話があります。
昔、近江の国に「ましての翁」と呼ばれる人がいたそうで、この人はなにかにつけて「まして」と言ったのだとか。空腹の時には「地獄の餓鬼の苦しみは、私の苦しみにも増して辛かろう」と思い、暑い時には「娑婆でこれだけ暑ければ、まして焦熱地獄の暑さは如何ほどだろうか」と思う。こんな風に、より辛い状況を思いやることで、目の前の状況を前向きに捉えることも、立派な仏道修行なのだという話です。
我々はついつい、一番良い時を基準にしてしまいがちです。しかし、一番悪い状況を考えることで心に余裕ができることもあります。例えば混雑に巻き込まれた時、ガラガラな時と比べればストレスですが、よりひどい混雑と比べればまだマシだと思える。身体の具合が悪い時、健康を失ったと思うと辛いけれど、自分の最悪の状態を想像すれば、まだ出来ることが沢山あることに気付ける。自粛はいい加減、うんざりしますが、それでも多分、戦時下よりは断然マシな筈です。
自分の意思や力だけではどうしようもない時、基準をどこに置くかで、心持ちは大きく変わります。決して理想を諦めるというわけではなく、最悪を想定することで現状を少し肯定的に捉える。一見、悲観的に見えるこんな前向きさも、時には必要なんじゃないでしょうか。不自由ばかりのコロナ禍の中に、マシなものがたくさん見つかるかも知れませんよ。
草野榮雅 拝
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令和3年9月〜11月の行事予定
9月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
9月17日 (金) 午後2時 秋彼岸大施餓鬼会
お塔婆は前もってお電話かFAX、Eメールでお申し込みください。一本三千円です。
10月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
10月17日 (日) 午後2時 観音経読誦会
11月7日・8日 (日・月) 午前9時 写経の会
11月17日 (水) 午後2時 境内石仏総供養
◇上でも触れている献灯会ですが、御奉納、お灯明料、ご寄付にて、今年は265,047円を寄付できました。
100,000円を日赤令和3年7月大雨災害義援金に、165,047円を日本財団を通じて新型コロナウイルス対策、医療支援に寄付させていただきました。
ご協力くださった方々、祈りを共にしてくださった方々に、心より御礼申し上げます。
◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
https://www.facebook.com/meijidera/