ひとくち伝言 令和5年11月

  「やわらか(やわい)」という言葉は「よわい」とルーツが同じなのだそうです。けれども、「身体が柔らかい人」は全く弱そうな気がしません。「血管が柔らかい人」はとても健康です。「頭が柔らかい人」は魅力的で、「物腰が柔らかい人」はむしろ強そうです。「柔らかい」は力に逆らわないので確かに一見、弱く見えるのだけれど、実はその力を吸収して元に戻るしなやかな強さに溢れているのです。なんでこんなことを考えているのかというと、「柔らかい芝」や「柔らかい枝」が切り難くて切り難くて……。柔らかさの強さを日々実感しております。

 ところで、「頭が柔らかい」というのは一体、どういうことでしょうか。様々な捉え方がありますが、啓発本やらビジネスコラムなどを覗いてみると、「自分の考えに固執しない」「変化を怖れない」「融通が効く」「様々な見方ができる」といったところのようです。これが、仏教の考え方に驚くほど近い。仏教用語のお堅い言い方なら「無我」「諸行無常」「融通無碍」「法門無量」などでしょうか。なるほど。仏教の目指すものは、柔らかい頭だったのかも知れない。確かに、仏教はその歴史を見ても非常に柔らかいですね。バラモン教、ゾロアスター教、ギリシャ哲学、ヒンドゥー教、儒教、神道などを学びつつも、仏教としての芯を残しています。

 そんな仏教最大の柔らかエピソードと言えば、『中阿含経』の筏の喩えでしょう。ある旅人が、大きな河を渡るために辺りの木を使って筏を作りました。そして、その筏で河を無事に渡り終えた。さて、その旅人は重くて嵩張る筏をこの先も背負って行くでしょうか。どんなに立派で頑丈な筏でも手放すしかない。同じように仏の教えも、悟りに達したならこだわる必要は無い。どんなに立派な教えであっても、それに固執して捕らわれてしまうなら手放しなさい。お釈迦様はそう弟子に諭しました。仏の教えはあくまで、幸せになるための道具、方法論なのです。

 知識や常識、道理や理想、主義や信仰といったものも、人生を生きるための道具、杖のようなものだと思います。頼りとなる硬い杖も、体にガッシリと括りつけたら、動きづらくて仕方ありません。転んだら大怪我です。柔らかく動く自分の体の横、あるいはほんの少し先にあるから頼りになる。決して、その杖で殴り合いなんかしちゃいけません。杖が傷みます。
 ちなみに、「柔(やわ)らか」は「和(やわ)らぎ」とも同じルーツだそうです。これはなんとなく、納得できますね。

草野榮雅 拝

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令和5年11月~令和6年1月の行事予定

 11月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 11月17日 (金) 午後2時 境内石仏総供養(境内百観音参拝)
 11月18日 (土) 午前9時 坐禅の会(要申込)

 12月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 12月17日 (日) 午後2時 納めの観音経読誦会法要
 12月16日 (土) 午前9時 坐禅の会(要申込)

 令和5年
 1月元日 (月) 修正会 
     午前6時・午後2時に新年祈願護摩
 1月7日・8日 (日・月) 午前9時 写経の会
 1月17日 (水) 午後2時 初観音法要

 2月3日 (土) 節分祭

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◇ 11月の観音経読誦会では毎年境内の石仏諸尊の総供養の為、境内を巡拝いたします。本堂で観音経読誦の後、外の観音様を巡ります。
ご希望の方にはお賽銭として、五円玉を百枚一組として両替いたします。
一枚ずつ観音様にお供えすることで、ご縁をお結びくださいませ。

◇ 父、榮應が以前に事務局長を務め、私も相談員を務めております仏教情報センターが、今年で40周年を迎えます。
その記念行事を11月7日14時より、築地 本願寺にて行います。
座席数の関係で一般参詣はございませんが、その模様はユーチューブで生配信いたします。
各宗派の特徴ある祈りがご覧になれますので、是非ご視聴ください。

  仏教情報センター40周年記念行事
  「声の力、祈りの力」11月7日14時

https://www.youtube.com/watch?v=_YxZ3NY7qr8




◇ 坐禅の会のご参加は、事前にお申し込みをしていただいております。参加希望の方はメール、ライン、電話等でお知らせください。
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         百観音坐禅の会 @040haupf
          

◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
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