ひとくち伝言 令和6年9月

 子どもの頃、近くを流れる妙正寺川が本当に海に繋がっているのか確かめたくて、その川沿いを辿っていったことがあります。沼袋の駅近くから歩き始めて、新青梅街道近くで江古田川と合流し、哲学堂公園の方へと流れていくのを追いかけて行く。線路の傍を蛇行するように川は下り行き、気づけば地名は「落合」。なるほど、ここで川と川が落ち合うのか。……と思いきや、川は高田馬場の手前で道路の下に流れ込み、見えなくなってしまいました。突然の行き止まりに熱意も冷めて、探検はほんの一時間ほど、たった4キロほどの道程で終了と相成りました。後で調べたところ、私が生まれる前はその落合の当たりで神田川と合流していたのですが、今は1・5キロほどの暗渠の先、明治通りとの交差点辺りで合流しているそうです。当時それを知っていたならば、神田川を江戸川橋から水道橋、浅草橋と辿って隅田川に合流し、浜町から箱崎、月島を経て、ちゃんと東京湾まで辿り着けたかも知れないのに。今、改めて挑戦してみたいとも思うのですが、あの頃のような探検気分にはなれないのでしょうね。川は変わらずにそこに在ろうとも。
 鴨長明の『方丈記』の有名な冒頭、「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は、仏教の無常観を表していると言われます。川という枠組みは変わらずとも、そこに流れる水は常に新しいものと入れ替わっている。同じように、この世を生きる人々も、その営みも留まり続けるものは何ひとつとして無い。私たち自身もまた、細胞や情報が常に置き換わり、混ざり合い、変化をし続けています。言わばこの世という川を流れ行くようなもの。淀むこともあれば澄むこともあり、穏やかな時もあれば、濁流に呑まれることもあるでしょう。そして川は何方かへ、いつか海へと辿り着く。
 お釈迦様の広大で深き教えを海に喩えて、法海と呼ぶことがあります。幾筋もの川もやがて同じ海に至るように、あらゆる教え、あらゆる現象、あらゆる存在が、一つの海に帰入する。浅深はあれど、一つの味となる。そんな考え方です。願わくは私たちの流れの往く先も、一味なる法海でありますように。お盆を終えた夏の暮れに、そのようなことを感じた次第です。


草野榮雅 拝

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行事ご案内 

 9月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
 9月14日 (土) 午前9時 坐禅の会(要申込)
 9月17日 (火) 午後2時 秋彼岸大施餓鬼会
   お塔婆は前もってお電話かFAX、メール等で     お申し込みください。一基三千円です。

 10月6日・7日 (日・月) 午前9時 写経の会
 10月12日 (土)【暫定】 午前9時 坐禅の会(要申込)

 10月17日 (木) 午後2時 読経と法話の会(月例法要)

 11月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会

 11月17日 (日) 午後2時 境内石仏総供養

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◇ 7月の献灯会では、お陰様で夕立に降られることもなく、賑やかに執り行うことができました。
 昨今のような不安が大きい時にこそ、共助の意義も大きいものと存じます。
 お灯明料の収益から168,134円を日本赤十字社の「令和6年能登半島地震災害義援金」に、150,000円を「セーブ・ザ・チルドレン緊急援助基金」の能登半島地震子ども支援に寄付させていただきました。
皆さまのお心が大きな応援となることを願いつつ、ここにご報告させていただきます。

◇ 秋彼岸大施餓鬼会にて塔婆供養をご希望の方は、事前にお申込みくださいませ。
お申込み料は振込か現金書留、当日持参でも結構です。



◇ 坐禅の会のご参加は、事前にお申し込みをしていただいております。参加希望の方はメール、ライン、電話等でお知らせください。
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         百観音坐禅の会 @040haupf
          

◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
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