ひとくち伝言 令和6年11月

 ジョギングを趣味にしている友人が、ある時、新記録を出しました。彼はいつも川沿いの小高い土手を走っているのですが、その日はとても調子が良かった。それこそ、飛ぶように走れたのだそうです。いつもの折り返し地点に着いて時間を見ると、驚くほどの好記録。「俺もだいぶ体力が付いたなぁ」と満足して復路を走りだしますが、どうしたことか、今度は体が異常に重い。足が上手く前に進みません。そこで彼は、はたと気付いた。自分に向かって、物凄い向かい風が吹いていることに。体調も体力も関係はなく、ただ往路は追い風だっただけなのでした。調子が良い時というのは自分の力を過信しがちなようで、目に見えぬ力添えにはなかなか気付けないようです。向かい風にはすぐ気が付くくせに。

 人生にも、上手く行かない時と、すんなり事が運ぶ時がありますね。運(うん)否(ぷ)天(てん)賦(ぷ)だけではなく、自分を取り囲む様々なご縁が、時に邪魔な向かい風になり、時に後押しをする追い風にもなります。そしてやはり、その後押しはいつの間にか当たり前になってしまって、なかなか実感できない。無くなって思い知らされることの、なんと多いことか。身近なご縁に限らず、自分の知らない所で誰かが心配してくれたり、骨を折ってくれていたりするかも知れない。見知らぬ誰かの頑張りに結果的に助けられたり、遠くの誰かの涙に実は救われたりしているのかも知れない。知らず知らず、誰しもたくさんの後押し、言わば「恩」を受けているのだと思います。
 仏教において、恩という言葉には二種類あります。一つは「援助」という意味のupakara(ウパカーラ)。これは、upa(接近して)+kara(為(な)す)なので、助ける側の意思がはっきりしています。もう一つはkrta(クリタ)で、「為されたこと」という意味。相手が人にせよ動物にせよ自然にせよ、向こうの事情は関係ありません。こちらが感謝していなくとも、とにかく、自分が受け取った力は全て「恩」です。生まれたことは元より、動植物から栄養を貰うこと、学ぶということ、そして多くの関わりの中にいること。ただ生きているだけで、この世は恩だらけです。
 自分の身に為されたことを知り(知(ち)恩(おん))、その恩に相応しく生きること(報(ほう)恩(おん))。それが、また誰かを後押しする風となる。それは、自分への風向きを良くする力となりましょう。少なくとも、向かい風を引き寄せるような恩知らずにはならぬよう、気をつけたいものです。
草野榮雅 拝

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行事ご案内 

 11月3日・4日 (日・月) 午前9時 写経の会
 11月9日 (土) 午前9時 坐禅の会(要申込)
 11月17日 (日) 午後2時 境内石仏総供養(境内百観音参拝)

 12月1日・2日 (日・月) 午前9時 写経の会
 12月14日 (土)【暫定】 午前9時 坐禅の会(要申込)
 12月17日 (火) 午後2時 納めの観音経読誦会法要

 令和7年
 1月元日 (水) 修正会 
     午前6時・午後2時に新年祈願護摩
 1月5日・6日 (日・月) 午前9時 写経の会
 1月17日 (金) 午後2時 初観音法要

 2月2日 (日) 節分祭

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◇ 11月の観音経読誦会では毎年境内の石仏諸尊の総供養の為、境内を巡拝いたします。本堂で観音経読誦の後、外の観音様を巡ります。
ご希望の方にはお賽銭として、五円玉を百枚一組として両替いたします。一枚ずつ観音様にお供えすることで、ご縁をお結びくださいませ。

◇ 元日は午後2時に招福を祈願して護摩祈祷を修法いたします。
ご希望の方は内陣にお上がりいただき、護摩の火の横で直接添え護摩木をくべていただきます。

◇ 節分は、太陽の位置によって決まる立春の前日ですので、日付は一定ではありません。
来年、2025年は二月二日(日)となります。
振るってご参加くださいますよう、お勧め申し上げます。




◇ 坐禅の会のご参加は、事前にお申し込みをしていただいております。参加希望の方はメール、ライン、電話等でお知らせください。
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◇ 百観音明治寺フェイスブックページ
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