ひとくち伝言 令和7年1月

令和七 乙巳 年 正月

 謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
 この時節にはよく、「一年の計は元旦にあり」という言葉を耳にいたします。新しい一年をどのように過ごすか、まずはその計画が重要という意味ですね。実はこの言葉、元々は元旦ではなく春だったようで、三本の矢で有名な戦国武将、毛利元就が息子に宛てた手紙には「一年の計は春にあり、一月の計は朔(ついたち)にあり、一日の計は鶏鳴(夜明け頃)にあり」とあります。中国の古い諺、「一年之計在于春」を引用したのでしょう。ただ、面白いことにこの諺の方は、微妙にニュアンスが違っています。農業において、秋にどれくらいの作物を収穫できるか、その取れ高は春の耕作の具合によって決まる。つまり「物事の初めに、しっかりと働いておかないといけない」という意味があるのだそうです。
 さて、計画を立てるにせよ、成果を計算するにせよ、計る前にはまず、現状把握が欠かせません。ビジネスの世界ではPDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Act=改善)という考え方があって、チェックを繰り返して計画を改善していきます。また、OODAループ(Observe=観察、Orient=状況判断、Decide=意思決定、Act=実行)という考え方では、まず観察や状況判断から始めます。そりゃそうですね。実情を無視した計画や試算は、夢想でしかありません。
 仏教の考え方でも、苦という問題を解決するために、まずは問題の認識から始めます。見ない振りをしたり誤魔化したりはせず、ちゃんと問題をあきらかにして(苦諦)、どういう要素が集まって原因となっているのかを考えます(集諦)。原因が分かれば、その原因が解消された目指すべき状態が見えてくるはず(滅諦)。あとは、そこまでの道筋を実践するだけです(道諦)。これがお釈迦様の問題解決法、「四諦」。実に簡単ですね! ……考え方自体は。実際のところは、思うように実践できなかったり、問題や目標を見誤っていたりで、我々はグルグルと迷ってばかりおります。
 それでも、繰り返す度に観察をして改善が出来れば、問題の解決に少しずつ近づいていくもの。上手く行かなければ振り返って観察し、原因を考え、目標を設定し、道筋を歩んでいく。煩悩を除く除夜の鐘の風習も、苦の原因をチェックする、観察の一環なのかも知れません。長いサイクルであれ、短いサイクルであれ、新たな道筋を立てる前には、じっくりと自分の問題を見つめ直すことが必要かと存じます。
 良き一年、良き未来の果報のために、お釈迦様の問題解決法「四諦サイクル」をどうぞご活用ください。

草野榮雅 拝

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 令和七年  主な行事のご案内 

 一月一日(水) 修 正 会(しゅしょう え )(護摩修行・祈祷)
                午前六時および午後二時頃、本堂にて修行

 一月十七日(金) 初観音大護摩供

 二月二日(日) 節分会 星まつり 午後二時より

 三月十七日(月) 春彼岸 大施餓鬼会

 四月八日(火) 釈迦降誕(ごうたん)会(え)(花まつり)

 四月二十九日(火・昭和の日) 慈音会法要・多宝塔供養会

 五月十七日(土) 観音護摩法要

 七月十七日(木) 盂蘭盆 大施餓鬼会

 七月二十七日(日) 百観音献灯会 夕方六時より

 九月十七日(水) 秋彼岸 大施餓鬼会

 十一月十七日(金) 境内石仏総供養大護摩供

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  ● 毎月十七日 読経と法話の会(月例法要)
     毎月午後二時より、太鼓の音に合わせて観音経と般若心経をご一緒にお唱えいたします。
     どなたでもご参加いただけます。
     正月、五月、十一月は護摩法要、三月、七月、九月は施餓鬼法要を併せて修行いたします。

  ● 毎月第一日曜日ならびにその翌日の月曜日
     午前九時より 写経の会 (小筆と納経料千円をご用意ください)

    ※一月は第一日曜日の五日と六日、二月は第二日曜日の九日と十日です。
     なお、八月はお休みです。

  ● 毎月一回、不定期で坐禅の会を行っています。詳細はお問合せください。

年回表
 一周忌  令和六年(2024年)寂            十七回忌  平成二十一年(2009年)寂

 三回忌  令和五年(2023年)寂            二十三回忌 平成十五年(2003年)寂

 七回忌  平成三十一年(令和元年)(2019年)寂   二十七回忌 平成十一年(1999年)寂

 十三回忌 平成二十五年(2013年)寂         三十三回忌 平成五年(1993年)寂